マラニック140km 「残念記」  2001.05.03〜05.04

5月3日(木)

17:50 瑠璃光寺前

4月29日から断続的に降り続いた雨は、この日の昼頃になってようやく上がり、 午後からは晴れ間も覗くようになった。
雨具や着替えの準備をする必要はないと判断し、ウェストバッグ1つ(中にはヘッドランプと使 い捨てカメラ、小銭、携帯電話など)で瑠璃光寺に到着(余談だが、ここの国宝 「五重塔」は、拝観料無しで間近に見ることができる。タダで眺められる国宝は全国 的にも珍しいのではないか?)。 翌日の70kmに参加のため山口入りしていた酒好きランナー選手に写真を撮ってもらった。
18:10 スタート 道路混雑を避けるため参加選手を50人ずつ区切って出発させる 「ウェーブスタート」の第3グループとして出発。酒好きランナー選手の激励を背に、最初の チェックポイント「小郡町上郷駅」へ向かう。
さすが長丁場だけに、皆スタート直後とは思えないスローペース。夕暮れ時の混雑を後目に 黙々と市内を走り抜け、秋吉台自転車道へ。
18:50 山口市矢原 秋吉台へのサイクリングやマラソンの練習コースとしてよく利用する「秋吉台 自転車道」を競技コースとして利用するのは初めて。といっても、マラニックのための通行規 制や役員配置などは一切なく、いつものように犬の散歩やウォーキングをしている人々の間を 縫って、淡々と走る。
時期が時期だけにあちこちの家の庭先からバーベキューのにおいが漂ってくる。
やがて鳳翩山の陰に陽が落ちて、上郷駅が間近に迫る頃にはあたりは真っ暗になっていた。
19:30 小郡町上郷駅前 最初のチェックポイントに到着。
足の疲れもそれほどなく、少し休んですぐに山口市(宮島町)まで引き返す。
あたりはすっかり夜の闇に包まれており、対向するランナーや自転車との衝突を避けるため ヘッドランプを点灯。
22:10 勝坂トンネル前 自転車道をほぼ走り通して山口市まで帰り、今度は県道21号〜国道262号 を南下して防府市へ向かう。
昼間であれば、自分が最も苦手とする一直線で平坦なだらだらコースだが、夜間で前がよく見 えないため、それほど苦にはならない。しかし、練習不足からか、大内のあたりで早くも足に 疲れがたまり、走ったり歩いたりを繰り返しながらようやく勝坂トンネル前の食堂「しゃもじ」 に到着。豚汁といなり寿司2個、コーヒーを1杯飲んで、個人的に 本コース最大の難所と思っている勝坂越えへ。
22:40 勝坂越え 何がイヤといっても、この勝坂越えくらいイヤなコースはない。狭い山道(防府側は 途中まで拡幅工事が行われている)の途中には火葬場 があり、ちょろちょろと水の流れる音に混じって時折響く蛙の声が 人の笑い声のようにも聞こえ、気味悪いことこの上ない。おまけに足の下は、知る人 ぞ知る「恐怖スポット勝坂トンネルである。
別に霊感もないし、金縛り以外の体験もない。勿論なんにも期待などしていないの だが、1歩坂を上りはじめると、「しゃもじ」でゆっくり休んで体が冷えたせいもあるのだろうが、 なんだか妙に寒い。「エクソシスト」の悪魔払いの部屋 みたいである。必死になって、少し前を行く4〜5名のグループに追いつき、そそくさと火葬場の横を 通り抜け(皆無言であったが、やはり県外の人にも知られているのだろうか?)、再び 262号線の側に出た。下り坂を一気に駆け下り、防府市内へ。
坂の途中では「60km歩け歩け」の出場者たちと次々にすれ違った。
写真・・・? 絶対撮りたくない!
23:30 防府市「英雲荘」 何度通っても距離や方位の感覚がつかめない(個人的印象)防府市内を通り、第2折り返し 地点の英雲荘へ到着。
後半へ向けて、少しでも時間を稼ぐためにすぐに出発。帰り道もやっぱり 怖い勝坂を通り抜け、 「しゃもじ」で一休みしたあと262号線をひた走り、山口市「福祉会館」へ到着。
この時、午前2時40分。用意されたみそ汁とおにぎりを食べながら、充分余裕を持ってゴール できると思っていたのだが・・・・・
5月4日(金)

03:20 「萩往還」へ

道の途中で目にゴミが入ったらしく、福祉会館の水道で何度も目を洗ったが、異物感が取れない。 気にしつつもそのまま出発した。思えばこれが苦難の始まりだった・・・
去年までの70kmの部ではスタート直後で苦もなく駆け上っていた一の坂川ダムへの 登り坂を、今年は目をこすりながら歩いて登る。このあたりまで来ると140kmの部もトップか ら最後列までかなりの距離が開き、先程までの前半戦(!)で抜きつ抜かれつしていた 選手たちともはぐれてしまい、完全に一人旅。そういえばこの先の「21世紀の森」も いわく付きのスポットだったなぁ・・・とイヤな思いを よぎらせつつダムを過ぎ、ついに本大会のメインコース「萩往還」に入る。
鳳翩山登山や「徒歩の会」でも利用した「日の明るいうちは」楽しい散策路だが、深夜ともなると 街灯ひとつなく(当たり前)、勝坂以上にひっそりと静まりかえった場所である。ヘッドライトで 照らし出された足下以外何も見えない。ここでランプの電池が切れたら文字通り「鼻をつまま れても分からない」真の闇の中である。おまけに相変わらず目の調子がおかしく、何度もこすって いるうちに・・・次第に、目のゴミだけではない視界の異変が訪れはじめた。
最初は、足の疲れから石段を踏みはずすのだと思っていた。また、真っ暗で一部しか見えないから 曲がり角に気づかず竹藪に入り込みかけたのだと・・・しかし、実は 眠いからなのであった。昼間ならまだしも、こんな山の中の、何がなんだか分から ない場所で歩きながら寝てしまったら(過去に経験がある) どんなところに迷い込むか、あるいは道を踏みはずして坂道を転げ落ちてしまうか・・・恐怖で 目がさえるどころか、ますます眠くなってしまった。あたりは相変わらず物音ひとつしない。 落武者の亡霊よりももっと怖い (実際にこの場所でそんなモノを見たという話は聞いていません、念のため) 「いまそこにある危機」を回避すべく、とにかく慎重に、ゆっくりと道を 確かめつつ萩往還を歩き、ようやく板堂峠にたどり着いたときにはしらじらと夜が明けていた
夏木原の茶店にたどり着いたのは5時10分。店の水道を借りてもう一度目を洗い、なんとか ゴミを洗い出した。
写真を撮っている余裕など、ない。
06:15 佐々並エイド 早朝の旭村は予想以上の冷え込み。
朝靄に包まれた国道262号線を抜け佐々並エイドに到着したのは、山口を出てから 3時間後だった。
「旭グリーンアドベンチャーマラソン」でもおなじみの名物「佐々並豆腐」 を食べる気力もなく、炭火の前の椅子に腰かけて体を暖めているうちにまた 眠気が・・・
ふと気が付いて時計を見ると、なんと7時20分! 椅子に座ったまま1時間もうたた寝していた。エイドの中の老人が笑いながら 「眠たいのぉ」と声をかける。 苦笑いしながらエイドを立ち去り、再び山道へ。
眠っている間に足の筋肉はすっかりこわばってしまっていた。
09:10 明木エイド 昨年までの70kmの部では難なく駆け下りていた一升谷を、ひたすら歩いて下りる。 250kmの選手ともしきりにすれ違うようになり、お互い疲れ切った顔で挨拶を交わす。 その横を、35km、70kmの選手が勢いよく走り抜けて行った。
明木エイドでは、先ほど食べられなかった佐々並豆腐の仇とばかりに、ここの名物「明木饅頭」を 4つ口に放り込む。「萩城まであと11km」の声に「あと(歩いて)2時間かぁ」と意気 消沈。エイドを出てとぼとぼ歩いていると、向こうから桜井選手が走ってきた。なんと元気な ことか・・・と思ったら、既にリタイアしたとのこと。それからしばらくして、こちらは5度目 の完踏確実なテツ選手ともすれ違う。
11:20 萩城址 もはや走る気力もなく、時折襲い来る眠気をこらえながら萩市に入る。有料道路料金所の下りと、 萩城址直前の橋の上で酒好きランナー選手(行き/帰り)とすれ違う。「もう眠くて眠くて ・・・」と言い訳を口にするのが精一杯であった。
明木での予想通り、2時間かけて萩城址公園に到着(また余談だが、萩駅から 萩城址までに点在する距離表示看板は数値がバラバラで いつも混乱−がっかり−させられる。 萩市に投書したら直してくれるだろうか)。チェックカードに3つめのサインをもらい、 とりあえず東光寺まで行ってリタイアしようと決意、 用意された昼食を食べて草の上に寝ころんでいるうちにまたうとうと・・・
目が覚めたら12時30分だった。

写真の中で寝ているのは私ではありません、念のため。
遠景は指月(しづき)山(標高143m)。低いが美しい山容で、特に菊が浜から海越し に望む姿が白眉。藩政時代より大切に保護されてきた照葉樹林が全山を覆い、国の天然記念物に 指定されている。登山(というか山中散策)も可能。
13:50 東光寺〜リタイア 海岸越しの指月山をかえり見る余裕もなく、191号線をふさぐ渋滞の車の列をすり抜けひた すら歩き、やっと東光寺へ到着。チェックポイントは寺の中だと思い山門をくぐった。
本当は拝観料が必要なのだが、こちらは中にチェックポイントがあるものと信じて疑わ ない。マラニックの選手は当然無料だろうと、料金所を素通りし、境内の向こうの墓所 (ここで毎年8月15日夜に行われる「万灯会−まんとうえ」 は幻想的で非常に美しい。一見の価値あり) まで行ってみたが、何もない。近くの人から「チェックポイントは外だよ」と教えてもらい、 再び外に出て探してみると、小さな看板とチェックライター が(他のチェックポイントのように人がいて飲み物が用意されているとばかり 思っていた)・・・。
チェックを終え、大会本部にリタイアを知らせ、 山口行きのバスが出る萩城址まで戻ろうと バス停に立った(歩いて帰る気力もない)が、定刻を過ぎてもバスはやって来ない。 心配になってバス会社に電話したら、萩市内が未曾有の大渋滞で 「何時に到着するか全然分からない」との返事。しかたなく じっと待っていると、通りすがりの人が親切にも萩城址まで車で送ってくれるという。さすが地元の人、 抜け道や裏道ばかりを通り抜け、渋滞をパスして萩城址へ到着。しかしエイドに 着いてみたところ、こちらも大渋滞の影響で、山口行きのバスがまったく来ない という話。また一眠りしている間に 陽は西に傾き、薄いシャツをとおして少しずつ寒さが身にしみてくる。 それでもバスは来ない。17時前、テツ選手からゴールの知らせが携帯に届いた。
18時近くなって、やっとバスが到着。山口への帰り道はもう渋滞も緩和され、それほど混み合うこ ともなく、19時前に瑠璃光寺に帰り着いた。門前で酒好きランナー選手が出迎えてくれた。
今年は恒例の「打ち上げ」は行わないとのことだったので、車に乗り込み早々と家路についた。

来年・・・? 今は考えたくありません!