山名/標高 吾妻(あづま)山
 吾妻小富士(あづまこふじ)/1705m
 一切経(いっさいきょう)山/1949m
 東吾妻(ひがしあづま)山/1975m

(一切経山から望む東吾妻山)

登山日・天候 2003年6月21日(土)曇のち晴
行程 浄土平(07:25)〜吾妻小富士(07:45)〜浄土平(08:00)〜酸ヶ平分岐〜一切経山(08:50)〜酸ヶ平分岐〜酸ヶ平(09:25)〜姥ヶ原〜東吾妻山(10:30)〜景場平〜鳥子平登山口(11:55)〜鳥子平〜浄土平(12:40)

吾妻小富士の裾をぬって延びる磐梯吾妻スカイライン(一切経山より)
福島県(福島市・猪苗代町・北塩原村)と山形県(米沢市)の間に、1900〜2000m級のピークをいくつも連ねる大きな山群を総称して「吾妻山」と呼ぶ。最高峰は2035mの西吾妻山。
山名の由来は、蝦夷征伐のためこの地を訪れた日本武尊(ヤマトタケルノミコト)が妻の弟橘(オトタチバナ)姫を偲び「吾妻はや」と嘆いた故事にちなんだものとも言われる。「日本百名山」の中で深田久弥はその説を否定したうえで、一切経山の北にある家形山(1877m)の形から「東屋」の呼び名が生じ、東屋山が変じて吾妻山(現在の東吾妻山)になったものと推察している。
一切経山は東吾妻山と並び古くから人の目にふれていた信仰の山で、阿部定任(空海との言い伝えもある)が経本千巻を山中に埋めたという伝説が残されている。これが山名の由来。
もっともポピュラーな登山口は、福島市と裏磐梯を結ぶ有料道路「磐梯吾妻スカイライン」の途中にある、標高約1500mの浄土(じょうど)平。ここから一切経山、酸(す)ヶ平、東吾妻山などを巡るコースは高低差が比較的少なく、湿原やお花畑、山頂からの大展望など見どころも多く人気が高い。また、スカイラインのすぐ脇にそびえる吾妻小富士はさらにお手軽なハイキングコースで、日中は一般の観光客もたくさん登っている。
ちなみに磐梯吾妻スカイラインの通行料は1570円、浄土平の駐車料金は410円(いずれも登山日現在の普通車料金)。吾妻山、安達太良山、磐梯山が指呼の間に並ぶ車窓からの展望は圧巻で、この通行料金も決して高くはないような気がする。脇見運転にはくれぐれも注意を。

福島市内から延びる磐梯吾妻スカイラインは、当たり前だがひたすら上り坂である。とにかく上る。延々と上る。おまけに運転していて酔いそうになるほどヘアピンカーブが連続する。
途中には旅館やホテルがひしめく高湯温泉という温泉地があり、辺りに硫黄臭が漂う。ここもずっと上り坂。
いい加減上り坂に飽きてきたころ、やっと勾配が緩やかになり、目の前に吾妻小富士が顔を出す。
さらに曲がりくねった道を数kmでやっと浄土平に到着。まずは足慣らしを兼ねて吾妻小富士に登る。
階段を上って10分足らずで吾妻小富士の火口壁に出る。思わず吸い込まれそうな気がする巨大な旧噴火口の縁を一周。強い風が吹き付け、まっすぐ歩くのにも難儀する。
(右)が山頂と思われる一番高い場所だが、特に標識もなかった。福島の街が眼下に霞む。

吾妻小富士より、これから登る山々を一望。風が非常に強く、雲がすごいスピードで飛び去ってゆく。
旧噴火口を一周して、浄土平に帰る。
(左)が浄土平駐車場全景。この時間は料金所も閉まっており、駐車場はガラガラ。ほとんどの登山者は手前の舗装された区画ではなく、奥の未舗装部分に車を停めていたが、何かルールがあるのかどうかは不明。
浄土平からはまず湿地帯の上の木道を歩く。すぐに一切経山へ向かう2つのルートに分岐。酸ヶ平経由のルートと岩場を直登するルートがあるが、今回は直登ルートに取りついた。
明治26年に大噴火を起こし、現在も噴気活動を続けている一切経山は、他の山に比べて緑が極端に少なく、登山道もほとんどがガレ場。それでもよく見るとイワカガミが小さな花をつけていたりする。
標高1949mとはいえ登山道の高低差は少ないので、直登ルートに喘ぐ時間も僅か。
遮るもののない一等三角点の山頂では強風が吹き荒れ、まっすぐに立っていられない。危ないのですぐに引き返した。
(右)山頂北側の眺め。神秘的なブルーの五色沼、その向こうに「吾妻山=東屋山」の由来ともいわれる家形山。
一切経山から酸ヶ平へ下る。この一帯は浄土平と同じく、明治26年の一切経山の噴火により火山灰に埋もれ、その後植生が回復しつつある場所。木道の上を多くの人が行き交う。

その名のとおり弓なりに曲がった形の鎌沼。山に登らず、この沼の周りを周回して浄土平に帰るルートもある。
酸ヶ平から鎌沼を過ぎ、姥ヶ原に入る。この辺りはいわゆる「お花畑」で、ワタスゲやチングルマ(下)などがよく見られる。
(左)は姥ヶ原の名の由来になった「姥地蔵」。西の谷地平方面へ少し進んだ場所にある。
姥ヶ原の木道が終わり、東吾妻山の登山道となる。
この樹林帯は元々湿地帯なのか、それとも雨のせいか、地面がぬかるんで滑りやすいうえに岩がゴロゴロ、オオシラビソの根まで露出し非常に歩きにくい。距離が短いのがせめてもの救い(後の下りではそれで散々苦しめられた)。
30分足らずで林の中から抜け出し、見通しの良いハイマツ帯に出る。山頂はすぐそこ。
三等三角点の山頂に到着。上りの途中では複数のグループとすれ違ったが、辿り着いた山頂には意外にも誰ひとりいない。
(左)西側の眺め。雲の切れ目から一瞬だけ顔を出した西吾妻山は、まだたくさんの雪をかぶっていた。
(右)北側の眺め。手前のオオシラビソが右(東)に傾いているのは、冬期の雪の重みではなく、強い西風が原因とか。この日の風の強さは今日に限ったことではないらしい。
山頂からはそのまま南に下り、景場平、鳥子平と呼ばれる湿原を回って浄土平に帰る周回ルートに入る。
(左)は山頂から10分ほど下った場所にある湿原。ガイドブックによると磐梯高原の展望地らしいが、何も見えなかったような・・・写真にも写っていない。
ここを過ぎると先ほどの上りと同様、ぬかるんで滑りやすく岩がゴロゴロして木の根が露出・・・という道。下りではさらに危険。しかも距離が長い。やたらと疲れる。
途中では多くの「上る」人とすれ違った。単純に考えれば姥ヶ原から東吾妻山に上り、景場平(右)に下る方が楽に思えるが、ここに限っては逆なのかもしれない。
景場平から再びぬかるんだ斜面を下り車道に出る(左)。
道路を横断し再び山道に入り、鳥子平を過ぎて樹林帯(平坦)を歩き、やっと浄土平に到着。
上がる道より下りる道の方が疲れるという妙な山行は、とりあえず無事に終わった。

浄土平からは二本松方面に下り、安達太良山登山口のある塩沢温泉に入浴。