山名/標高 天杉(あますぎ)山/1174m
登山日・天候 2004年4月24日(土)・晴ときどき曇
行程 奥匹見峡・三ツ滝駐車場(08:10)〜No.2尾根(08:22)〜No.5森林入口(08:33)〜988mピーク(09:12)〜三段腹の谷(09:33)〜野田原の頭〜山頂(10:57-11:35)〜恐羅漢山・中ノ川山分岐(12:15)〜亀井谷林道出合(13:11)〜亀井谷奥橋(14:28)〜林道入口(15:05)

※「三段腹の谷」は、登山道途中の標識に書かれた地点名。「野田原の頭」は、山頂手前にある1136mピーク。標識がなかった(気付かなかった)ので通過時間は不明。

西中国山地の最高峰・恐羅漢山(1346m)の北方、奥三段峡の渓谷が広がる田代川の源流を挟み、聖山(1113m)や砥石郷山(1177m)の西に延びる島根県(匹見町)と広島県(戸河内町)の境界尾根上の1ピーク。地図上には名前が載っていないことが多い。
南北に平たく延びているように見える山頂は、実際は2つのわずかな隆起を持つ双耳峰で、1173.5mの三角点がある北側ピークに対し、ヤブに覆われて道もない南側ピークが1190mと若干高くなっている。
匹見町では、奥匹見峡から天杉山を経由し台所原から恐羅漢山へと続く縦走ルートや、中ノ川山(1170m)手前から亀井谷へ下るルートなどを整備しているが、一見地味な山で知名度が低く、山頂までの距離も長いため、一般のハイカーにはほとんど知られていない。それだけに静かな山行が楽しめ、また山頂までの道のりは植生豊かな自然林が続き退屈させない。通好みの隠れた名山といえる。

春日山山頂からの眺め。(2002.10)

今回の山行では、車を2台利用して折り返しなしの縦走ルートとしたが、車1台で周回する場合は、奥匹見峡入口または亀井谷林道を発着とし、本コースに6km弱(1時間強)の車道歩きを加えた行程となる。折り返しの場合も距離が長く、単独行は避けた方が無難。

国道191号線から「奥匹見峡」の標識を見て小さな橋を渡り、細い道を数百mで駐車場に着く。
天杉山登山道は、この駐車場の片隅から出発する長い尾根歩きのルート。入口標識からは、すぐに尾根への取りつきとなる急登が待っている。
今回のメンバー・・・斉藤夫妻、田中(善)、小川、伊藤、和崎の6名
西側の展望が良い尾根(No.2)に出て、ササの刈られた歩きやすい道をしばらく行くと、森林(No.5)に入る。
登山道の脇には数字とポイント名が書かれた小さな標識があり、これを辿れば山頂に行ける・・・はずだったが、先に進むにつれて標識は少なくなり、数字の書かれていない標識が多くなってくる。
尾根の西側、整った三角形の山容が特徴的な春日(かすが)山がそびえる。
芽吹きの季節。目に鮮やかな新緑と早春の山野草に彩られ、森の中は生命感にあふれる。
先へ進むにつれて、周囲の木々は次第に太く大きく変わってゆく。成長を続けるブナ林は、いずれ恐羅漢の台所原や臥龍山のような豊かな森に育ってゆくだろう。
ブナやナラの合間に、飯ヶ岳の滑松のような見事なアカマツ(同種?)が空に向かってまっすぐ伸びている。遠望のきかない登山道だが、緑が美しく植生の豊かな森の中は、いくら歩いても飽きることがない。

三等三角点の山頂に標識はなく、周囲は木々が伸びて展望を遮りつつある。画像は北東方向の眺め。
昼食後、亀井谷へ向けて下山を開始。道のりはまだまだ長い。
途中、縦走路の左手(南)には木々の間から恐羅漢山が姿を見せ、右手(北)には日本海に浮かぶ高島まで見えた。画像では判別不能だが、海の手前に大きな煙突(火力発電所と思われる)が見えたことから、三隅町の沖合あたりの眺めだろう。
縦走路をしばらく南下すると、匹見町教育委員会による「←天杉山 恐羅漢山→」の標識が立つ三叉路に出る。直進すれば中ノ川山を経て台所原に出るが、ここでは標識にない右(西)の道に入り、亀井谷林道との合流点を目指す。

森の間から天杉山の全容が窺える。
ブナの幹にクマの爪痕が残る森を抜け、急坂を下ると亀井谷林道の最奥部に出る。帰路はこの林道を谷に向かって下りてゆくことになるが、逆向きに少し上れば林道の最高点・鳥越峠に達する。この峠からは、さらに岩倉山(1023m)山頂へと登山道が続いている。
林道は未舗装で荒れているが、4輪駆動車なら何とか走行可能。実際に上ってきた車もあった。
「道草」を食いながら、1時間以上かけて林道を下り、亀井谷奥橋に到着。ここからは匹見川源流のひとつとなる亀井谷川の渓谷に沿って、林道をさらに入口まで下る。
冬の水墨画と夏の油彩画の中間、水彩画を思わせる新緑の、さらに芽吹きはじめの頃の山肌は、淡く微妙な色が重なり合う。画像ではその美しさを伝えきれない。
林道入口で車を回送し、長大な縦走は無事終了。帰りは美都温泉に立ち寄り、汗を流した。