山名/標高 砥石郷(といしごう)山/1177m
恐羅漢(おそらかん)山/1346m
登山日・天候 2004年12月15日(水)・晴
行程 餅ノ木林道分岐(09:25)〜田代橋〜登山道入口(09:35)〜展望地(10:35)〜砥石郷山頂(10:50)〜1166mピーク(11:05)〜夏焼峠(11:25)〜牛小屋分岐〜恐羅漢山頂(12:20-13:05)〜牛小屋分岐〜立山尾根〜スキー場〜牛小屋高原ヒュッテ(13:35)〜キャンプ場〜ダム堰堤(13:55)〜牛小屋谷〜田代橋(15:00)〜餅ノ木林道分岐(15:05)

スキー、登山の山として人気の高い恐羅漢山だが、ふもとの牛小屋高原へたどり着くための車道は、これまでは標高1000mの内黒峠を越える細く曲がりくねった一本道しかなく、非常に不便であった。
最近、国道191号線から恐羅漢山のふもとまで延びる餅ノ木林道と横川林道が拡張、舗装され、大型バスも通行可能となった。幅広く安全な道は登山者にとってもありがたいが、この林道は十方山西側の細見谷ブナ林を切り開き、吉和まで延長する予定であるということで、自然保護の面から建設反対の声も大きくあがっている。
・・・その話題は別の機会に譲るとして、今回の山行はその広域林道から逸れて未舗装の旧道に入り、奥三段峡へ続く林道との分岐点から出発。
田代川に沿って5分ほどで、傍らに無人の水位雨量観測施設の建つ田代橋に到着。この鉄橋を渡ると遊歩道となり、すぐに直進(牛小屋谷)と上り(砥石郷山)の2方向に分岐。まずは砥石郷山の上りにかかる。
地図やガイドブックの記載もほとんどない登山道だが、比較的最近にササが刈り払われたようで歩きやすく、道に迷う心配はない。なにしろ山頂まで文字通りの一本道である。ひたすら急坂の直登が続く。

山頂の少し手前、大岩を巻いて急斜面を上ると、平たい岩の上から北西方向のパノラマが広がる。
空気が霞んでいてこの時期にしては遠望がきかないが、それでも瀬戸内海の島々まで見渡せる眺めに疲れを忘れ、山頂への最後の急登にかかる。
周囲の木々はブナに変わり、一気に標高を上げてきたことを実感する。登山口から山頂までの距離は1.5km足らずで、標高差は500mを越えている。
平坦で眺めの良いササ原に出て少し歩くと二等三角点の山頂。周囲は木々に囲まれ、ここからの眺望はない。

山頂手前、ササ原からの眺め。内黒山から十方山にかけての縦走ルートを一望できる。
山頂からは夏焼峠を経て恐羅漢山へ。尾根を南西方向に下る途中、モリアオガエルの産卵地「魔の池」を過ぎ、夏焼峠への下りにかかる手前で一時樹林帯を出て見晴らしの良い場所に出る。
ここが標高1166mのピークで、大きくなだらかな印象の強い恐羅漢の山頂部が、ここからは整った三角形に見える。なるほどスキー場を造るのに絶好の斜面ではある。

1166mピークからの眺め。それにしても・・・ゲレンデの向こう側が益田市というのがいまだにしっくりこない。
1166mピークから尾根筋を一気に下る。周囲の自然林はやがてカラマツの植林へと変わり、中ノ甲林道との分岐を経て夏焼峠へ到着。
ここからは上りに転じ、すっかり葉の落ちた木々の枝越しにゆったり裾を広げる恐羅漢のピークを目指す。普段なら雪の中を歩いてもおかしくない季節だが、日射しは暖かく、歩いているうちに汗ばみ、半袖になったほうがいいくらいの陽気。
台風、地震と来て1年の締めくくりはこれまた記録破りの暖冬。2004年が単に異常な年で終わるのか、それともこれが始まりなのか。
山頂に近づくにつれ気温は下がり、正午にもかかわらず地面には霜が降りて一部に雪も残る。下界に比べればさすがに寒いが、それでも1ヶ月くらい季節が遅れている感じ。
山頂手前で単独行の登山者とすれ違う。この日山で出会ったのはこの人ただ1人。皆、雪が積もっていると思って敬遠しているのだろうか。
恐羅漢山頂。周囲のヤブが刈り払われて眺めが非常に良くなっていた。
(右)は、山頂から日本海を眺めているところ。海の手前に大きな煙突が突き出ているのが肉眼でもはっきり見えた。これは三隅町にある火力発電所。
(左)は山頂のシンボルであった立ち枯れた巨木。普段ならとても手の届かない場所に打ち付けられたプレートが積雪の深さを示してくれていたが、先般の台風でついに力尽き倒れたのだろう。

山頂から北東方向の眺め。この時期晴れていれば、天狗石山の奥に三瓶山が見えてもおかしくないのだが・・・
昼食後、山頂から少し引き返し「牛小屋高原」の標識に従い立山尾根に出てスキー場ゲレンデを一気に下る。
大山のスキー場よりも標高が高く「オール天然雪」が自慢の恐羅漢スキー場は全くの草地で営業準備の気配もない。
ゲレンデの次は、こちらもシーズンオフで閑散としたキャンプ場内を抜け牛小屋谷を目指す。
よく整備されたキャンプ場の歩道からイノシシよけの電気柵をくぐり、少し荒れ加減の道をダム堰堤まで下る。ここからは渓流いにつけられた遊歩道を伝ってもとの田代橋へ。
牛小屋谷は今回のメンバー(斉藤宗、加藤、和崎)全員が初めて通る道で、立ち止まって渓谷を眺め、落ち葉に埋もれた道を確かめながら、あるいはまた、新緑や紅葉の美しさを想像しながら歩いて行く。
しかし、この遊歩道は近年ほとんど整備されていないと見え、進むにつれて道の崩壊が目立ってくる。
崩壊箇所からは沢を渡り向こう岸に踏み跡が残っていたり、最近ここを歩いた数少ない人たちの苦闘のあとがうかがえる。とりあえず渓流に沿って進めばよいのでそれほど迷うこともなく、渡渉ポイントを探りながらの沢歩きはなかなか楽しい。
マムシもクマもいない時期ならではのゆとりである。
壊れたままの案内板に「餅ノ木断層」の説明が書かれている。この辺りは餅ノ木断層と横川断層が並行して走っており、これらが三段峡の渓谷美を形作っている。
道の傍らにかつての集落の跡と思われる石垣が目につきはじめると、田代川との合流点は近い。最初の赤い橋を渡るとすぐに砥石郷登山道との分岐に戻り、その先に田代橋。渡れば出発地点の林道分岐はもうすぐ。