山名/標高 冠(かんむり)山/1003m
一兵山家(いちべえさんか)山/952m
天狗石(てんぐいし)山1192m
高杉(たかすぎ)山/1149m
登山日・天候 2005年6月18日(土)・晴のち曇
メンバー 斉藤(宗)、斉藤(滋)、加藤、伊藤、和崎
行程 ロッジサイオト駐車場(09:10)〜中野冠山登山口〜中野冠山頂(09:50-10:05)〜ノベリ山(10:50)〜一兵山家山頂(11:40)〜来尾峠(12:20-12:45)〜高杉山分岐(13:35)〜天狗石山頂(13:50-14:00)〜ホン峠(14:20)〜高杉山頂(14:50)〜サイオトスキー場センターハウス前(15:20)〜ロッジサイオト駐車場(15:50)
中国地方で最大規模のスキーエリアとなっている広島県北広島町(旧芸北町)の北端は島根県境に接し、この境界に沿って大佐山、大潰山、雲月山、阿佐山など、標高900m〜1200m前後の山々が稜線を連ねている。
このうち、島根県旭町に接している才乙地区は中野冠山、一兵山家山、天狗石山、さらに広島県側の高杉山を加えた馬蹄形の稜線に取り囲まれている。才乙集落に面した高杉山北西斜面には「ユートピアサイオト」スキー場が建設され、冬場はスキー・スノボ客で賑わっているが、登山者にとってのお楽しみは、地元有志らによって整備された上記4山の稜線上を巡る縦走ルートである。初夏から夏にかけて山野草が多く、イワカガミ、ヤマホウシ、ササユリ、アカモノなどが目を楽しませる。また、天狗石山の頂上付近にはオオヤマレンゲの自生地がある。

※「冠山」は、他の同名の山と区別するため「中野冠山」と通称。地元では「カブリ山」とも呼ばれる。

才乙中からの眺め。中野冠山(左)から一兵山家山(右奥)までの稜線はかなり起伏が激しい。

雪が消えシーズンオフの才乙(地名の読みは"さようと")は、周囲を標高1000m前後の山々に囲まれた静かな農村に戻っていた。
オフ中も開放されているロッジサイオトの駐車場から、まずは中野冠山の山頂を目指す。駐車場からスキー場方面へ少し進むと、ロッジ風外装の酒屋が現れる。手前を左へ、登山口標識に従って森に入る。
森の中にジグザグにつけられた道は、急坂というほどでもなく、踏み跡もしっかりしており歩きやすい。
傾斜が緩やかになり、周囲の木々の丈が低くなると間もなく縦走路と合流。中野冠山と一兵山家山との分岐点だが、まずは中野冠山へ。両側を低灌木に覆われた道を5分ほどで山頂へ到着。
明るく、360度の見晴らしがきく中野冠山頂。条件のいい日は日本海まで見渡せそうだが、この日は空気が霞んでいて遠望はあまりきかなかった。
北西に雲月山の草一面の山肌。中野冠山は、雲月山や深入山の山焼きを一望できる展望台としても人気があるという。

北東方向、これから縦走する山々の眺め。

南東方向の眺め。ここからは臥龍・掛頭が一体の山に見える。深入山は彼方に霞み、シルエットも判然としない。
縦走路を北東へ、一兵山家山へと向かう。登ってきた道との分岐を過ぎると、いきなり急な下り坂。しかも長い。延々と下ること約180m(標高差)。どこまで続くのだろうと心配になってくる頃ようやく最低鞍部に到着。弾かれるように今度は急な上りがはじまりげんなりするが、これは長くは続かず、その後は一兵山家山までアップダウンが小刻みに連続する(途中のピークは全部で9つとのこと)。
中野冠山頂から一兵山家山頂まで、縦走路の長さは約3.5kmだが、距離以上にだらだらと長く感じられる。
(左)は縦走路のほぼ中間にある「ノベリ山」(939.7mピーク)。高杉山が真正面に見える。先はまだ長い。
さらにいくつもピークを越して、ちょっと開けたササ原に出たと思ったらそこが一兵山家山だった。小さな標識と三角点があるだけで、周囲を木々に囲まれて眺めはほとんどない。すぐに来尾峠へ下る。  
来尾峠への道も、すぐに下りはじめるのではなく最初は何度かアップダウンを繰り返す。
このあたりの登山道は、県境を示す土塁(放牧時の牧柵を兼ねていたのかもしれない)の上につけられており、1列で歩くには十分な道幅だがけっして広くはなく、踏み外すと数十cmの落差がある。足元に注意。
(右)島根/広島県境の来尾(きたお)峠。島根県側は道幅が狭く冬季は通行禁止となる。天狗石山に登る前に、ここで昼食休憩を取った。
来尾峠から天狗石登山道に入ると、すぐに直登の急坂がはじまる。
30〜40分ほどで平坦で見晴らしの良い草地に出る。ここからは天狗石山、高杉山の両ピークが一望でき、少し進むと中野冠山や一兵山家山も視界に入ってくる。さらに進むとまた灌木が視界を遮りはじめ、道が二手に分かれる。右に下るとホン峠経由で高杉山。天狗石山頂へは直進して森に入る道を選ぶ。

登山道中腹・草地からの眺め。左:天狗石山 右:高杉山
分岐から一歩踏み込むと森は意外に深く、ブナが多い。
山頂の手前には周囲に木々を従えた大きな岩塊が砦のようにそびえ立っている。山口/広島県境の鬼ヶ城山同様、これが「天狗石」の名の由来だろうか。登山道はこの巨岩の脇を伝い、まもなく展望台の設けられた山頂に到着する。
展望台からは、晴天時には三瓶山、十方山、恐羅漢山などが眺められるそうだが、天気は朝よりも曇りがちとなり、遠望はさらにきかなくなった。
オオヤマレンゲは、この展望台のすぐ下にある岩の下から枝を伸ばし、花を咲かせている。群落というほど数は多くないが、間近に花を見、触ることもできるのが嬉しい。
午前中の2山に比べここはさすがに登山者が多く、カメラを手にした人が岩の上をさかんに行き来していた。

青空に天女花(おおやまれんげ)ひかりたれ 原 石鼎
(左)オオヤマレンゲのつぼみ。
分岐まで引き返し、高杉山方面に下る。こちらの道もすぐに森の中へ入り、ホン峠から上りに転じる。ブナ林の中を直登で高杉山、右に行くと乳母御前の祠を見てサイオトスキー場に下る。
乳母御前は、壇ノ浦の源平合戦で安徳天皇を抱いて入水した二位の尼を祀ったもの。この地には平家の落人伝説も残されている。
開発を逃れた高杉山北斜面にはブナの古木が残り、陽ざしを遮ってくれる。
森の中、かなり近い場所から鹿の声が聞こえてきた。つかず離れず、登山者に何かを訴えるようにいつまでも鳴き声が追いかけてきた。
いつの間にかブナと鹿の森から出て、灌木に囲まれた草地の中へ。ここが高杉山頂。三角点と小さな標識があるだけで展望はほとんどない。
見晴らしのない山頂から少し移動すると急に視界が開ける。この山頂はサイオトスキー場のリフト最上部でもあった。最大斜度30度の「メダリストコース」を、滑らないようにゆっくり下り、30分ほどでセンターハウスにたどり着いた。