山名/標高

英彦山・南岳から望む岳滅鬼山
岳滅鬼(がくめき)山/1037m
英彦山(ひこさん)/1200m
登山日・天候 2006年4月30日(日)・晴
行程 別所駐車場(08:15)〜奉幣殿(08:35)〜玉屋神社(09:10)〜大南林道・岳滅鬼山登山口(09:30)〜黒岩山分岐(09:45)〜深倉林道・岳滅鬼峠分岐(09:55)〜岳滅鬼峠(10:20)〜岳滅鬼岳(10:45)〜岳滅鬼山山頂(10:55)〜(折り返し)〜深倉林道〜鬼杉橋(12:15)〜鬼杉観察路入口(12:20)〜鬼杉(12:35)〜大南神社(12:50)〜南岳(13:30)〜中岳・英彦山上宮(13:40)〜稚児落し〜中宮〜奉幣殿(14:30)〜別所駐車場(14:50)
岳滅鬼山は福岡県(田川郡添田町)と大分県(日田市)の境にあり、津江地域との広域合併以前は日田市の最高峰だった。求菩提山、犬ヶ岳、釈迦ヶ岳などと共に英彦山系に属しているが、附近の山とは岩質が少し異なっており、もとは独立した火山だったという説もある。
細く切り立った尾根にはノコギリ状にピークが連なり、そのうち最高地点の標高は1040mだが、三等三角点は1037mピークに置かれており、こちらが公式な標高となっている。
山の東側、稜線の鞍部にあたる岳滅鬼峠はかつての交通の要所で、江戸時代は深い原生林に覆われ、道行く旅人(その中には日田出身の儒学者、広瀬淡窓もいた)が山ヒルに悩まされたとの記録も残っている。戦後は伐採されスギの植林が進み、深山の面影は山頂へ続く尾根道に残るのみとなった。
山頂へは、西隣の釈迦ヶ岳(844m)または岳滅鬼峠から尾根伝いに縦走することとなる。岳滅鬼峠経由のルートは中腹まで林道が通じ、英彦山に近いこともあってシャクナゲの開花時期を中心に登山者が多いが、尾根上には急峻でもろい斜面をよじ登るような危険箇所がいくつかあり、注意が必要。

GWに入り、天気も安定してきたので久しぶりの登山。
別所駐車場から奉幣殿へ向かう道は花や新緑に彩られ、風の強いのが気になるが、心が浮き立つ。
奉幣殿から足取り軽やかに石段を上がり、玉屋神社・鬼杉コースへ。
玉屋神社から少し下り、鬼杉コースへ続く道との分岐を右折、下り方向へ進み("下レバ彦山駅ニ至ル"の朽ちかけた方位板が置かれている)大南林道へといったん下る。
一部舗装された道を20分ほどで大南林道に合流。林道からの入口に鳥居が立つこの道は、玉屋神社の参道となっているのだろう。

大南林道へ下る途中、天狗やガマの石像が祀られた祠があった。
鳥居のすぐ前の木にくくりつけられた「岳滅鬼山登山道」の略図によると、いったん河原に下り、渡渉した向こう岸に登山道が延びている模様。川には橋も架けられているが、腐っており渡れる状態ではなかった。
川を渡ってからはテープを頼りに踏み跡を辿る。英彦山登山道のように標識の類は充実していないので、目印を見落とさないように。
沢を過ぎ、杉木立の急坂を越えると「黒岩山」分岐の表示があったが、矢印方向に道らしきものは見えない。
この分岐からさらに10分ほどで大南林道上部(出入口ゲートには"深倉林道"とある)に出る。道の反対側に「岳滅鬼山登山口300m」の大きな看板。右に林道を少し上ると障子岳登山口もあるらしい。少し休んで岳滅鬼山の方へ、狭い林道を上る。
林道の途中に立てられた第二の看板から登山道に取りつく。岳滅鬼峠までは上るにつれて次第に傾斜を強めていくが「後のことを考えれば」普通に上れるレベル。振り向くと木々の上に英彦山が顔を出している。
急坂を上りきると石造りの古い道標が立つ岳滅鬼峠。道標には「從是北豊前國小倉領」。現在でもここは福岡・大分の県境尾根である。右の急峻な尾根を進むと岳滅鬼山、左に10mほど進むと展望の良い岩場がある。ただしこの日は黄砂がひどく、遠望は全く望めなかった。
岳滅鬼山へと向かう尾根道は非常に急峻で、細い木の根や枝、頼りないはしご(木の枝を組み合わせ針金で留めたもの)やロープに掴まり、もろく崩れやすい岩場をよじ登っていく、非常に怖い道のり。
最も標高のある3つめのピークへの上りが最も危険で、手足を慎重に動かしていかなければならない。今まででいちばん怖かった?!
各岩場では振り向くと英彦山の眺めが良いのだが、眺めている心の余裕はあまりない。
必死の思いで3つめのピークにたどり着くと「岳滅鬼山 標高1040m」の標識が出迎えてくれる。ここが岳滅鬼山の最高地点には間違いないのだが、三等三角点(1036.9m)が置かれた地図上の山頂は、尾根道をさらに先へ、もう一度下り、上り返した4つめのピークにある。
この3つめのピークは「岳滅鬼岳」とも通称され、ガイドブックでは英彦山や阿蘇・九重が見えるとあるが、山頂は狭く、眺めもほとんどない。
第3ピークと第4ピークの間はシャクナゲの自生地となっている。が、まだつぼみは小さい。
4番目のピーク、岳滅鬼山頂は木々に囲まれ見晴らしは悪いが、広々として木漏れ日も明るく、休憩をとるにはこちらの方が良さそうに思われた。
少し休んで引き返し、上りよりもさらに怖い下りをどうにかクリアし、林道との分岐点に戻った。
深倉林道からはもとの登山道に入らず、右折して林道を玉屋神社の方へ歩いていく。この道は鬼杉や玉屋神社への分岐を経てさらに下り、英彦山温泉の前に出て国道と合流するようである。
ゲートを抜け(一般車通行禁止となっているが、オフロードバイクは頻繁に行き来している)渓流を見ながら少し下ると「おにすぎばし」と書かれた小さな橋に出る。渡って数分で鬼杉観察路(登山道に合流)入口。数台分の駐車スペースがある。
鬼杉の入口付近では杉の植林が行われており、鹿による食害防止のため道と植林地の境界にネットが張り巡らされている。1mに満たない幼木が並ぶ草地から、10m以上の巨木が立ち並ぶ薄暗い森の中へ入ってゆくと、辺りの景色に何となく見覚えを感じてきた。
やがて目の前に樹齢1200年の鬼杉が現れ、その大きさにまたも圧倒される。
鬼杉の先で道は二手に分かれ、左の「奉幣殿」方面に行けば大南神社(神社からまた南岳登山道に合流可)。
前回は知らずに右の南岳直登ルートに入ってしまい神社を見落としてしまったが、今回は右のルートが通行止めとなっていたので、迷うことなく大南神社前に出ることができた。
三仏寺投入堂ほどの迫力はないが、岩窟に納めるようにして建てられた大南神社、なかなか風情がある。
大南神社前から南岳方面へ、少し上るといきなりそそり立つ岩と、その岩に吊された鎖。見た瞬間足がすくんだが、実際は岩の上に足をかける窪みがあり、問題なく上ることができた。岩を越えるとすぐに南岳登山道と合流。
南岳登山道は急坂と鎖場が連続し、以前登った時もかなり苦しんだが、すでに一山終えた足にはさらに辛い。岩に足をかけようと、少し高く足を上げただけでふくらはぎがつりそうになってしまった。
南岳山頂は風が強く、展望台に上がっても黄砂が舞って遠くの山はまるで見えなかった。今回は時間と体力の都合で北岳廻りはパスし、中岳上宮参拝のあと正面登山道を下った。
下山後は英彦山温泉しゃくなげ荘に入浴。