山名/標高 万年(はね)山/1140m
登山日・天候 2006年5月24日(水)・晴
行程 吉武台牧場入口(06:45)〜避難小屋・水場(07:10)〜上万年台登山道入口(07:15)〜上万年台山頂(07:20-07:35)〜(折り返し)〜吉武台牧場入口(08:05)
万年山は大分県玖珠町の南、九重町との境界付近にあり、この地域特有のメサ(頂上が平坦で周囲が切り立った卓状地形)の山のうちでも特に規模が大きく、全長数kmに及ぶ山頂部「上万年(うわばね)」とそれを受ける「下万年(したばね)」が積み重なったダブル・メサの地形を成している。
伝説によると、昔この地方にとてつもなく大きなクスノキがあり(これが玖珠の地名の由来)、その木陰では作物の収穫が悪かったので、あるとき大男に頼んでクスノキを切り倒してもらった。その切株が伐株(きりかぶ)山(690m)となり、伐採のとき根元の土をはね上げたのが「刎ね山」=万年山になったという(さらにその土を被ってできたのが湧蓋山)。雄大な伝説が残るこの地出身の童話作家・久留島武彦の功績をたたえた「日本童話祭」が毎年5月4〜5日に行われ、全長76mの鯉のぼりや仮装行列などが町をにぎわす。万年山も会場のひとつとして利用される。
登山ルートはいくつかあるが、玖珠町からのルートは下万年台の牧場手前まで車道が通じており、登山道(遊歩道に近い)も危険箇所はなくファミリー登山向け。下万年台にはミヤマキリシマ群落があり、開花時期は5月中旬〜下旬。また、毎年5月の最終日曜日に山開きが行われる。

玖珠町からの眺め。伐株山、万年山などメサの山々が連なるこの地形、砂漠に置き換えると西部劇でおなじみの風景となる。

玖珠町内を通る国道210号線から万年山または切株山へ入る道がいくつか分かれており、入口には標識も立っている。
玖珠ICから九重方面に向かう途中の大隈地区は万年山温泉にも近く、国道脇に立てられた看板もひときわ目立つ。ここから町道に入り、次第に細く曲がりくねってくる道を上へ上へ進んでいく。
道路は牧場前でゲートが閉じられ、行き止まりとなる。そばにトラクターや作業機械が置かれた広場があり、ここに車を置いて徒歩に切りかえる。
ゲートの先も牧場での作業用に舗装された車道なので登山という雰囲気ではない。ゲート脇に立てられた案内板によると山頂までの距離は1.9km。
麓はうっすら霧に包まれていたが、ここでは道の上に青空が広がり、背後から射す朝日がまぶしい。朝の散歩気分で気持ち良く坂を上った。
上りが緩やかになると下万年台。辺りは草原となり、その先に九重、湧蓋山、由布岳などが顔を出す。由布岳の下には霧の海が下界を包み込んだまま広がっていた。

下万年台から見る上万年台。手前にはミヤマキリシマ群落が広がっているが、開花はまだこれからの様子。
上万年台への上り口手前には避難小屋やトイレ、水場が整備されている。ここで星を見ながらのキャンプも面白いだろう。周囲に植えられているミヤマキリシマは花をちらほら咲かせていた。
上万年台への上りは少し急な階段となる。山頂までの残り距離は0.3km。
階段を上りきると丈の低いササ原。そこから少し進むと、一等三角点標柱と山頂標識の立つ広々した草原に出る。展望はほぼ360度で見通しも良い。ただし、北から西にかけては霧のせいかかなり霞んでいて、英彦山や犬ヶ岳の稜線がぼんやり見える程度だった。

南東〜南の眺め。特徴的な稜線を連ねる九重連山。玖珠富士の呼び名どおり秀麗な湧蓋山。その奥に阿蘇五岳の涅槃像。

南〜西の眺め。小国町を覆い隠した雲海の上に渡神岳、釈迦岳がそびえ立つ。

北東〜東の眺め。雲海の上には玖珠周辺のメサや遠くの由布岳など特徴的な山が多く浮かび、神秘的な雰囲気が漂う。