山名/標高 安蔵寺(あぞうじ)山/1263m
登山日・天候 2007年11月17日(土)・晴 
行程 杣の里よこみち(10:05)〜登山口駐車場(11:05)〜打原峠(11:25)〜高鉢山分れ(11:40)ナラ太郎(12:00)〜寺屋敷(12:35)〜安蔵寺山頂(12:40)〜展望台(12:45-12:55)〜(折り返し)〜杣の里よこみち(15:35)

国道187号線に立つ「杣(そま)の里よこみち」の大きな看板を見て旧道に入り、津和野町(旧日原町)左鎧(さぶみ)の集落へ。ここからさらに県道189号線に入り、高津川支流の横道川沿いに続く狭い道を上流に向かって進むと、横道の集落に出る。
「杣の里よこみち」は、廃校となった横道小学校の校舎を利用した宿泊・研修施設。今回はここの元・校庭に駐車し、登山口(奥谷)まで歩くことにした。
この県道は「匹見左鎧線」となっているが、匹見に抜けることなく安蔵寺山塊で分断されている。横道の先2kmで舗装路が途切れ、残り3kmは砂利道となった。路面の状態は良く、普通車でも問題なく通行できるが、道幅が狭いので離合にはかなり苦労しそう。
とはいえ、横道から奥谷までの5kmを歩くのは、トレーニングや「登山道だけでは物足りない」という人以外にはおすすめできない。この部分だけでも300m以上の高低差があり、山頂までの高低差は1000mに迫る。
林道は、安蔵寺の中腹に向けてさらに延びているが、ゲートにより一般車の通行は遮られている。この行き止まり手前に、そこだけ舗装された広い駐車場がある。
天気の良い週末にもかかわらず、駐車場に駐まっている車は2〜3台(帰りも同様だった)。最近は安蔵寺トンネルからの短縮コースが主流なのだろうか。
横道では見ごろを迎えていた紅葉は、登山口付近でも散り急ぐことなく鮮やかな色を残していた。
登山道に入っても、道は相変わらず上り続けていたが、森の中は目を楽しませる色彩にあふれ、疲れを感じる間もなく高度を稼いでいった。
稜線上の鞍部、打原峠に出る。あとは緩やかな稜線歩きが山頂まで続く・・・と思いたいところだが、ここから山頂までにはまだ300m以上の標高差が残っていた。
急坂はないが最初はじわじわと上りが続き、峠と山頂のほぼ中間にある樹齢600年余のミズナラ「ナラ太郎」からはアップダウンを繰り返す道となる。周囲は山頂までほとんど樹林帯で、一部に植林地もあるがほとんどが自然林。伊源谷同様、天然のアシオスギも所々に見られる。
2000年に林野庁が選定した「森の巨人たち百選」のうち、中国地方からは5本が選ばれている。
ナラ太郎(林野庁の呼称は"安蔵寺山の大ミズナラ")は、西日本では最大といわれ、幹の周囲は最大4.8m、樹高は30mに達する。
ナラ太郎が芽を出した頃、約600年前といえば、人の世は室町時代前期、一休さんや足利義満がTVアニメで・・・じゃなく、現実に生きていた時代である。そう考えると、600年分の年輪の重さが見る側にもズシンと感じられてくる。
なお、この木が実際に「発見」されたのはつい最近、奥谷からの登山道が開かれたときだという。
ナラ太郎、「最近は熊も鹿も猟師も木こりも来んさらんようになって、変わりにいなげな格好した爺さん婆さんばっかり、えっと来るようになったなぁ」と思っているかもしれない。
ほとんどの木は既に紅葉を終え、葉を落としていた。遮るものが少なく木漏れ日がまぶしすぎるほどだが、太陽の位置が低いので、まだ正午過ぎなのに地面に落ちる影が長い。
ついこの前まで暑い暑いと言っていたが、気がつけばもう晩秋である。
下山までの残り時間は充分にあったが、陽の傾きにせかされるように急ぎ足で落ち葉を踏んだ。
山頂に近づくと、紅葉どころかほとんどの木が落葉を終えてしまい、周囲の見通しが良くなっていた。
山頂を踏んだ後、少し南の展望台へ。晩秋の澄んだ空気というにはやや透明度が足りなかったが、わずかに色を残した寂地山や小五郎山から遠く海辺に霞む須佐の高山まで、雄大なパノラマを堪能し、また急ぎ足で横道までの道を引き返した。

(左)展望台から望む晩秋の西中国山地。 (右)西から北西にかけての眺め。