北岳の登山口となる高住神社(豊前坊)から国道500号線を野峠方面に進むと、九州自然歩道の案内板が立つ数台分の駐車スペースがある。ここから右手に未舗装の林道が分岐しており、鷹巣山・裏英彦山の登山道を示す小さな標識が立てられている。林道は荒れており、入口に自動車の通行はできない旨の標示が置かれている。 少し歩くと左手に鷹巣山登山口の小さな標識。薬師峠を越えて大分県に入ると左手に雨量計が現れ、少し先の右手に裏英彦山入口の標識がある。ここから植林帯に入る。 |
林の中は踏み跡が落ち葉に埋もれて判りにくいが、枝に巻かれたテープのほか、切り株に小さなケルンが積まれており、これらを辿っていくことで尾根に出ることができる。 尾根からは自然林となり、新緑がきれいだが、丈の高いササが道の両側から迫ってきて落ち着かない。この時期はササの葉が落ちており歩きやすいが、葉の生い茂る時期はかなり難儀しそうである。 尾根は次第に急坂となるが、裏英彦山道は途中で尾根を外れ谷をトラバースする。この先、南岳西側(鬼杉上部)の"表"登山道合流点まで、尾根をまたぎ谷をトラバースする形で南側の斜面を横断することとなる。 |
谷はブナをはじめとする広葉樹の木々に覆われた明るい樹林帯。この日は快晴で下界はかなり暑くなったが、ここでは新緑が陽差しを遮り、快適に歩くことができた。 ただし踏み跡は細く、テープを確認しなければならない場所が多い。足場の悪いところもあるので慎重に足を運ばなければならない。 |
今年の春は、都合がつかず西中国山地のブナ林を歩く機会を逃してしまったが、思わぬところで見事な森にめぐり会えた。 台所原や安蔵寺山の伊源谷コースを思わせる深山幽谷の気が漂い、しんと静まりかえった木々の間に野鳥の声が響きわたる。 |
何度目かの尾根渡りで、木々の上にそびえる南岳の岩峰が目に飛び込んできた。これでこのコースも残りわずかだと思ったらとんだ間違いで、まだ裏ルートの1/3も進んでいない。 尾根をまたいで少し進むと大岩が積み重なった谷間に出る。ここからは枝につけられた細いテープの目印を頼りに、岩を乗り移って谷を下ってゆくことになる。苔生した岩の上は簡単に滑りそうで、支えになりそうな木の枝もない。おまけに所々浮き石もある。本当にこの道でいいのかどうか、不安になりながら慎重に下った。 |
岩場を下り、小さなケルンがたくさん並べられている平坦な場所に出た。「ケルンの谷」と呼ばれているこの場所に、誰が何の目的でケルンを積み重ねていったのだろう。ルート不明瞭な場所ゆえ目印にはなるが、ちょっと異様な感じ。 周囲に目印が見えなくなってしまい焦ったが、下ってきた方と対面の斜面を少し上ると標識が見つかった。 谷間を横切る細いトラバース道はさらに続く。 | |
(左)ひさしのようにせり出した大岩からしたたり落ちる水。「垂水の壺」と名付けられたこの岩の前にある標識によると、籠水峠まではあと「60分」とのこと。
新緑の森の中に常緑樹が少しずつ増えてきた。登山道にこぼれ落ちる陽差しがやや暗くなったように感じる。 |
「60分」の標識から実質35分で、籠水峠に到着。ここからは尾根伝いに岳滅鬼山へ縦走する道が分岐している。 峠の右手には巨大な岩壁がそそり立ち、圧倒される。 南岳登山道の合流点まで、道は相変わらず細いが目印は増えてきた。(右)は鬼杉の方角を示す「オニ」岩。 |
岳滅鬼山に登ったときほど足は疲れていないが、鎖場の上りでは足に思ったほど力が入らず、少しひやひやした。 |
南岳山頂に建つ展望台は、老朽化のためか立入禁止となっていた。 中岳の上宮に参拝し、昼食休憩中の登山者でにぎわう山頂広場で一休みした後、北岳縦走路へ向かう。 |
台風の被害を受け、植生回復中のブナ林。鹿の食害を防ぐためネットが張り巡らされた光景は、やむを得ないとはいえ裏英彦山を歩いた後では何とも味気なく、眺める気になれなかった。 幼木は厳重にネットで保護され、北岳山頂の磐境(禁足地)の中にもネットが巻かれた木々が並んでいる。ケルンの谷とはまた違う意味で異様な感じ。 |
北岳山頂からは岩場をゆっくり下り、高住神社に到着。岩場の途中では小バエが、神社の境内から豊前坊駐車場にかけては小さなムカデ?が大繁殖していた。あまりに数が多かったので、何か異変の前触れでなければ良いがと心配。 英彦山の通常ルートが物足りなくなるくらい豊かな森に包まれた裏英彦山は、紅葉の時期にもまた歩いてみたい魅力的なコースであった。 |