山名/標高 白山(はくさん)
 御前峰(ごぜんがみね)/2702m
登山日・天候 2010年7月25日(日)・晴
行程 別当出合(05:20)〜別当坂分岐(06:05)〜殿ヶ池小屋(07:10)〜黒ボコ岩(07:55)〜弥陀ヶ原〜室堂(08:20-08:30)〜お池めぐり〜御前峰(09:30-09:45)〜室堂(10:10-10:25)〜トンビ岩(10:45)〜南竜山荘(11:20)〜甚之助小屋(11:55)〜中飯場(12:50)〜別当出合(13:20)

市ノ瀬から別当出合の間は,7月〜10月の週末を中心に交通規制が行われ,規制期間中はこの区間でバスが運行される。約20分間隔で,片道400円。

白山は,富山・石川・福井・岐阜の4県にまたがる両白山地の中央に位置する山群の総称で,最高峰の御前峰(2702.2m)と剣ヶ峰(2677m),大汝峰(2684m)の3ピークを特に「白山三峰」,さらに別山(2389.4m),三ノ峰(2128m)を加えて「白山五峰」とも呼ぶ。
富士山,立山と並ぶ「日本三霊山」のひとつで,古くから霊峰として信仰されてきた。717(養老元)年に泰澄上人により開山されたと伝えられ,御前峰山頂には加賀国の一宮であり,全国に約2000社ある白山神社の総本社でもある白山比(しらやまひめ)神社の奥宮が鎮座している。
白山はまた,古くから花の多い山としても知られ,特にクロユリ(石川県の花)は日本一の個体数を有するといわれている。早くから高山植物の調査が行われたため,ハクサンイチゲやハクサンフウロをはじめ「ハクサン」の名を冠した植物名が多い。また,中腹にはブナの原生林が広がり,日本有数の巨大なブナ(幹周り5m以上)を見ることもできる。
現在よく利用される登山道は,石川県側の「観光新道」「砂防新道」と,岐阜県側の「平瀬道」の3コース。白山一帯は1962(昭和37)年に国立公園に指定され,それ以後は新たな開発がほとんど行われていないため,上記を除けば古来からの修験者の道を引き継いだ長大で険しいルートが多く,山頂まで数日を要する場合もある。全体に急峻な地形であるため,未だに人跡未踏の地も多く残されているといわれている。

翠(みどり)ヶ池と白山三山。左から大汝峰,剣ヶ峰,御前峰(右端)。

市ノ瀬(標高830m)から別当出合(標高1260m)まで登山者を運ぶバスは,早朝5時から運行をはじめる。少し薄暗いバス停前には早くも乗客の列が並び,車内は満員で身動きがとれない。バスは曲がりくねった山道を進み,20分ほどで別当出合に到着した。
ここからの登山道は2つあり,砂防ダムの作業道を利用した「砂防新道」の方が室堂までの距離が短く,多くの登山者はこちらから上るようだが,今回は少し距離が長く険しい「観光新道」から上ることにした。こちらは,1000年を超える歴史を持つ修験の道「禅定道」に起源を持つ古道。この禅定道は市ノ瀬を起点とし山頂まで約10kmの険しい道で,別当出合からはつづら折りの急坂を上った尾根上で合流する。
尾根に出ると,谷を挟んだ向かい側に白山五峰のひとつ別山が堂々と稜線を広げ,その下にある福井,石川県の山々は雲海から頭だけをのぞかせている。雄大な眺めに「さすが2000m超の眺望」と感嘆したいところだが,ここはまだ大山山頂と変わらない高さであった。上りは以後も延々と続く。
道端には高山植物が色とりどりに花を咲かせており,しばしば足を止めては写真撮影。まだ朝の早い時間だが「ご来光」の帰りだろう,下山してくる登山者が次第に多くなり,尾根上の殿ヶ池避難小屋も下山グループに占領されていた。

殿ヶ池小屋の先で「馬の立て髪」と呼ばれる急坂を過ぎ,泰澄上人が千匹の蛇を土中に埋めたと伝えられている「蛇塚」からさらに数分で,砂防新道との合流地点「黒ボコ岩」前に出る。登山者が一気に増え,賑やかになった。室堂までは残り900m。
弥陀ヶ原に入ると風景が一変。まだ雪の残る御前峰をバックに,花咲き乱れる草原の上を爽やかに風が渡る。そこは高峰の持つ峻険さや荒々しさよりも,心地よさや優美さといった言葉が浮かんでくるような雲上の楽園であった。
弥陀ヶ原の木道を渡り,少し上ると室堂に到着。2002年に改築されたというビジターセンターは,700人以上が収容できる宿泊施設(原則として事前予約が必要)を併設するほか,食堂や売店,郵便局もある。
建物を抜けると正面に御前峰と白山比盗_社(祈祷殿)が現れる。神社に参拝の後いよいよ山頂へ向かうが,直登路を行く登山者が多く,上り勾配もキツそうだったので,案内板から左手の道に迂回し,まずは「お池めぐりコース」を歩くことにした。
(左)白山を代表する花のひとつクロユリは,石川県の県花にも選ばれている。花の香りは嗅がない方がいい・・・。
(中)血ノ池越しに望む剣ヶ峰。公式には剣ヶ峰に上る道はないが,山頂には標識らしきものが見えた。
(右)白山最大の火口湖,翠ヶ池。遠望する雲海の上に北アルプスの長大な稜線が浮かぶ。その中にひときわ尖ったピークが目を惹き,当然これは槍ヶ岳だろうと思っていたが,後でよくよく写真を見直してみると剱岳であった。ずいぶん遠くまで見えていたものだ。

お池めぐりコースから白山二峰の眺め(大汝峰はこの位置では背後になる)。御宝庫は,火口から噴出したマグマが凝結した溶岩柱。


御前峰山頂からは360度の展望が広がる。上が東側,下が西側の眺め。山頂直下にある祠が白山比盗_社奥宮。
上空はよく晴れていたが低い場所には雲が広がり,下界の様子は覗えなかった。屏風のように連なる北アルプスの山々が圧巻。
御前峰から室堂にまっすぐ下り,さらに「トンビ岩コース」を南竜山荘方面に下る。当初はそのまま稜線を別山まで縦走し,チブリ尾根から市ノ瀬まで下るつもりだったが,残り時間と足の疲れ具合から計画を変更し,南竜山荘から砂防新道を経由して別当出合まで下ることにした。
室堂の気温は8時の時点で「16度も」あったが,春が寒かったからか残雪も多く,火口湖の一部はまだすっぽりと雪に覆われ,トンビ岩コースにも一部にミニ雪渓が見られた。しかし,この暑さでは雪が消えるのも時間の問題だろう。
(左)南竜山荘のある一帯は,南竜ヶ馬場と呼ばれる標高2050m前後の高原地帯。素泊まりも可能な山荘のほか,キャンプ場もある。
砂防新道の下りは急坂が長く続き足への負担が大きい上に,正午を過ぎてもなお続々と上ってくる登山ツアー(1泊+ご来光コースか)との離合待ちでペースが乱れ,疲ればかりがたまる感じ。周囲は樹林に囲まれ展望は乏しく,高度を下げるごとに上がる気温がさらに疲労に拍車をかける。
下山時間が分散するから空いているだろうと予想していた市ノ瀬行きのバスも,始発と同様の超満員だった。
次に白山を訪れるときは,今回を参考にコース選択と時間配分をじっくり練り直さねば・・・。