山名/標高

湯野・観音岳中腹からの眺め。
中央奥のピークが昇仙峰。(2004.04)
昇仙峰(しょうせんぼう)/261m
登山日・天候 2011年2月8日(火)・曇
行程 山陽道ガード下駐車地(09:55)〜(正面コース)〜大将軍説明板(10:05)〜山頂(10:15-10:25)〜荒神社上宮(10:30)〜四郎谷コース入口(10:35)〜山陽道ガード下駐車地(10:55)
地下上申によると,「この山麓に往古正仙坊という寺があった。それ故にこの山を正仙坊山というようになった」と記してある。その後の変遷でいつの間にか昇仙峰と言われるようになった。
頂上から一望できる徳山湾は風光明媚で,今はハイキングコースに利用されるが,昭和13年4月,徳山湾が海軍徳山要塞の裁可を受けてから終戦まで,徳山港防衛の要塞として徳山要港警備隊戸田照聴所があった。
今でも山頂付近には,探照灯台,砲台や,兵舎跡などの施設が多く残り,平和な戸田地区において数少ない戦争の傷跡を残す山でもある。
(戸田地区コミュニティ推進協議会の案内板より)

防府市方面から国道2号線椿峠を下り,湯野温泉入口の次にある信号から右折して橋を渡る。集落の間を道なりに進み,山陽自動車道のガード下をくぐると,左手に4〜5台分の駐車スペースがあるのでここに車を駐める。
昇仙峰正面コースは駐車場所の向かい側から舗装された坂を上る。数百mほどで登山口の看板がぶら下がる車止めが現れるが,その後もしばらく舗装路の上りが続く。
昇仙峰正面コースの半分以上は舗装路で高度を稼いでいるのではないか。そう感じるほどに急坂で日陰が乏しいので,暑い時期に登るのはたいへんそうである。途中で一息ついて金網越しに湯野温泉を遠望。観音岳や,先日登った城山が近い。来た道を振り返ると,山陽道が眼下に伸びていた。
舗装の途切れた場所に「大将軍」の説明板が立つ。山陽道工事中にここで経塚が発見されたという。ようやく登山道らしくなった道は雑木林の中へ延びている。山頂まで残り500m。
未舗装といっても整地され広く歩きやすい道は,もともと軍用路として開かれたもの。最初は緩やかに感じた傾斜は,少しずつ角度を強めながら山頂手前に達する。
山頂付近は切り開かれて見晴らしの良い斜面で,最下部にコンクリートのトイレがある。これも元は軍事施設の一部だったのだろうか。その上には,やはりコンクリート造りの頑丈そうな砲台跡が2〜3基並んでいる。
徳山湾を一望する山頂には古びた「憩いの館」。これも戦時中の兵舎跡で,剥落した壁の下から見える煉瓦が時代を感じさせる。
この日は曇り空で遠望もきかず,徳山湾のパノラマは霞み気味だった。また別の機会に登りに来たい。憩いの館の前には,最近植えられたらしい桜の木があるので,できれば4月に。
戦時中の遺構のほか,山頂には二基の石祠がある。ひとつは「石鎚神社」(天気のいい日はここから石鎚山も見えるだろうか),もうひとつは毘沙門天を祀っていたそうだが,毘沙門天は山麓に下ろされ,この祠は現在は空となっている。
かつての信仰の山が軍事施設となり,今はのんびりハイキングを楽しむ場に・・・この小さな,あまり目立たない里山が人の世に翻弄されてきた歴史をしのばせる山頂の風景だった。

山頂の南端に残る探照灯の台座跡からは,現在は東側しか望むことができない。
山頂を後にして,探照灯台座跡の脇から標識に従って四郎谷(しろだに)口下山道に下る。上りに歩いた広い道の後では狭く感じるが,雑木林の中に続くはっきりした踏み跡を辿ると,5分ほどで四郎谷の荒神社上宮となる石祠の背後に出る。ここからは前方の視界が開け,四郎谷の集落とその向こうの海が見渡せるようになる。
荒神社上宮から下はほぼまっすぐな急坂で,下るには早いが上りは少し辛そうである。傾斜がゆるみ,文政年間に建てられた石鳥居をくぐると間もなく登山口のある舗装路の側に飛び出す。
海に向かって開けた斜面に棚田が広がる四郎谷地区は,「やまぐちの棚田20選」に選ばれており,天気の良い日は鶴見岳や由布岳,くじゅうも望めるという。こちらもまた,時期を変えて訪れてみたくなった。
四郎谷登山口から出発地点までは約1kmの道のり。棚田を背に舗装路を少し上ると小さな峠にさしかかり,その後は山陽道のガード下まで緩やかな下りが続く。
今回の所要時間約1時間。ゆっくり歩いても2時間あれば充分な,味わい深い周回コースである。