山名/標高 阿蘇(あそ)山
周囲120km、東西16km、南北24kmに及ぶ世界最大級のカルデラ火山。
「阿蘇山」というのは固有の山名ではなく、カルデラ内の中央火口丘群(高岳、中岳、杵島岳、烏帽子岳、米塚、楢尾岳、往生岳など)の総称。このうちの高岳、中岳、杵島岳、烏帽子岳、根子岳(学術上は外輪山に含まれる山)を特に「阿蘇五岳」と称している。また、五岳の稜線の連なりを久住高原側から望むとまるで人が横たわっているように見えることから、通称「涅槃像(寝観音)」とも呼ばれる。

(上)湧蓋山から望む涅槃像。(2009.10)  (下)南外輪山から南郷谷越しに望む阿蘇五岳。(2008.06)

カルデラ内は中央火口丘群によって南北に二分され、北を阿蘇谷、南を南郷谷という。2008年現在、阿蘇谷に1市(阿蘇市)、南郷谷に2町村(高森・南阿蘇)があり、人口は合計約4万8千人。「噴火口の中に町があり人が暮らしている」とは、実際に阿蘇に来てその光景を見るまでは信じられないような話であるが、平坦な地形で湧き水が豊富なカルデラ内は農地に適していたため、古くから人が定住し集落を作っていた。阿蘇市の「阿蘇神社」は紀元前(孝霊天皇9年)の創建と伝えられ、肥後国一宮として高い格式を持ち、古代の国造の子孫である阿蘇氏が現在も宮司を世襲している。

阿蘇観光の定番「大観峰」(2002.05)

阿蘇山は1934(昭和9)年に九重山を含めて「阿蘇国立公園」に指定された(同時期に阿寒、大雪山、日光、中部山岳も国立公園指定)。その後1953(昭和28)年に鶴見岳、由布岳、高崎山を追加指定。1986(昭和61)年に現在の「阿蘇くじゅう国立公園」に改称された。
噴煙たなびく火山を従えた雄々しい阿蘇五岳の山容と、牧歌的な田園風景が融合した景観は「火の国熊本」のシンボルとして親しまれ、年間を通して多くの観光客が訪れる。雄大な自然とそれを活かしたドライブコースに加え、豊富な温泉や名水も人気を集めている。
もちろん「日本百名山」の山として登山者にも人気が高い。阿蘇五岳はすべて登山道が通じ、概ね整備され歩きやすい道となっているが、高岳の仙酔尾根や根子岳は急峻な岩場で、滑落事故が何度も発生している。また、中岳の噴火口は現在も火山活動が続いており、二酸化硫黄などの有毒ガスにも注意が必要。

山 行 記 録
2001.05.26 烏帽子岳と杵島岳
2001.05.26 仙酔峡〜仙酔尾根〜高岳〜中岳〜仙酔峡
2008.06.06 仙酔峡〜仙酔尾根〜高岳〜中岳〜仙酔峡
2010.06.06 草千里ヶ浜から烏帽子岳へ
2011.03.26 雪の高岳・中岳

高岳(たかだけ)/1592m 中岳(なかだけ)/1506m

中岳・火口東ロープウェイ乗り場から望む高岳。(2008.06)
高岳の標高1592mは「ヒゴクニ」=「肥後国」の語呂合わせで覚えやすい。
根子(ねこ)岳/1433m(天狗岩)

高森町・月廻り公園からの眺め。(2002.05)
最高地点の天狗岩は崩落のため現在登山禁止。
実際に登れるのは1408mの東峰まで。
烏帽子(えぼし)岳/1337m 杵島(きしま)岳/1270m

俵山登山道からの眺め。(2005.08)
左:杵島岳、右:烏帽子岳 


高岳山頂のミヤマキリシマ群落。(2008.06)