山名/標高 二岐(ふたまた)山/1544m
登山日・天候 2003年6月22日(日)・晴
行程 二岐山林道入口(08:40)〜二岐温泉(08:50)〜御鍋神社(09:35)〜南登山口(09:55)〜ブナ平(10:20)〜男岳山頂(10:55)〜女岳山頂(11:20)〜二岐山林道登山口(12:05)〜二岐山林道入口(12:30)
那須連峰の北方にそびえる独立峰で、その名のとおり南北に2つのピークを持つ双耳峰。伝説によると、大男のダイダラボッチがこの山をまたごうとして山頂に股間をぶつけ、現在の形になってしまったという(岡山県の蒜山にも似たような伝説が残されている)。南側の1544mピークを男岳(西岳)、北側の1504mピークを女岳(東岳)と呼ぶ。また、丸みのある2つのピークが並んでいることから「乳房山」の別名もある。
南登山口の近くには平将門が隠れ住んでいたとの伝説が残り、将門が使っていたという鍋をご神体としている御鍋神社が建てられている。また、東山麓に湧く二岐温泉は秘湯として有名で(矛盾した表現?)県内外から多くの旅行者が訪れている。

二岐山、二岐温泉。福島に来たときから目を付けていた展望自慢の山と、そのふもとに湧く秘湯。どうせ登るなら快晴の日にと機会をうかがい続け、最後の週末にやっと訪れた梅雨の合間の絶好の晴天。
国道から分岐して登山口と温泉に続く道は未舗装の林道という話。いろいろ調べたが「悪路」という情報くらいしかなく(ただし定期バスが運行する)、実際どんな道なのか心配しながらのドライブだったが、特に問題なく登山口までたどり着けた。未舗装には違いなかったが現在工事中で、そのうち舗装された走りやすい道路になることだろう。二岐温泉も「秘湯」として有名になったからか宿泊客が多く、登山者や釣人、秘湯マニアが相手の小さな宿が数軒、という事前の予想は大きく覆された。渓流に沿って10軒くらいの旅館や民宿がひしめき、一般の観光客で大いに賑わっている様子。
旅館街を抜けると、大きな案内板の置かれた広場に出る。登山者用の駐車場らしく数台の車があり、その先には今出発したばかりのグループが歩いている。
登山口のある御鍋神社までは「あと4km」の表示。後について歩いて行くことにした。
林道は登山者や宿泊客を乗せた旅館の車(御鍋神社見学だろう)、それに山菜取りの車も出入りし、交通量も人通りも意外に多い。
二岐山南登山口(男岳側)の手前にある分岐を左に折れ、鳥居をくぐって林間の道を数百m下った沢沿いに御鍋神社が建つ。
平将門、桔梗の前、平の九郎の3神を祭神とし、ご神体はその将門が使っていたという鍋。拝殿の前にも大鍋が逆さ吊りにされている。
拝殿の前に立つサワラの木は高さ42m、樹齢520年と伝えられ、林野庁の「森の巨人たち100選」に選ばれている。
もとの道に戻り、5分ほどで登山口に到着。「ゆっくり登って120分」とある。
登山道は最初から容赦なしの直登+急坂でびっくり。その後傾斜は次第に緩やかになるものの、ブナ平までは上りっぱなしの状態が続く。
登山ルート下部の森にはアスナロやミズナラが多い。道は踏み跡が明瞭で、木の幹につけられたペンキや赤い布の目印をたどれば、道に迷う心配はない。
1本の樹に書かれた「ブナ平入口」の赤い文字をきっかけにして傾斜が緩やかになり、周囲にブナの木が増えてきた。しばらくして、男岳山頂部を望むことのできる見通しの良い台地に出る。
ブナ平という呼び名は、正確には過去の名前である。
以前はその名のとおりブナ林が広がっていたブナ平は、あるとき大規模な伐採が行われ、見通しの良い原野となってしまった。この山頂展望所(左)も切り株が立ち並ぶ無惨な状態だったという。今は雑木が生い茂り、再び展望を遮りつつある。
ブナの木が少ない一帯にあえて「ブナ平」の名を残すのも皮肉だが、一種の戒めかもしれない。
このブナ平を過ぎると再び急登がはじまる。木の根や岩を手がかりに、山頂に向けて最後のがんばりどころ。
二等三角点の山頂。期待どおりの360度の展望が広がる。
男岳・女岳にはそれぞれ西岳・東岳の別名があるが、位置的には南北に並ぶ2峰に何故この名があるのだろうか。双方の位置を比べても、西岳=男岳の方がむしろ東寄りである。

山頂より南側の眺め。こうして見ると意外と那須岳に近いことが分かる。
二岐温泉から小白森山〜大白森山を縦走して甲子温泉に下ることも可能。
男岳から鞍部を抜け、ロープの張られた急坂を上って女岳山頂へ。眺望もなく、山頂を示す標識もないが、ここが山頂であることを示す記念樹が。
少し進むと北に展望が開け、登山道は一気に、一直線に急降下する。下り口手前の祠に安全を祈願し、ロープをしっかり掴んで下山開始。
登る前に眺めた二岐山の形を思い描けば、男岳よりも女岳の方が急斜面なのは明らかだったのだが、全く意識になかった。
一瞬通行止めかと思うくらい、黄&黒の工事用ロープが張り巡らされた下山路は、単なる急坂どころではなく、鎖を垂らせば立派な鎖場になる「崖」であった。ゆっくり、慎重に下る。
傾斜が次第に緩やかになり、ロープも要らなくなった頃、前方に「二岐明神」の鳥居。ここをくぐり抜けるとすぐに広い林道が待っている。
林道をゆっくり下り、出発地点に帰る。その後二岐温泉まで移動し、大丸あすなろ荘の渓流露天風呂で汗を流して帰途についた。