山名/標高 英彦(ひこ)山/1200m

中岳山頂にある英彦山神社上宮

登山日・天候 2003年12月7日(日)・曇ときどき晴
行程 別所駐車場(08:15)〜奉幣殿(08:30)〜玉屋神社(09:15)〜鬼杉(10:10)〜材木石(10:25)〜南岳山頂(10:55)〜中岳山頂(11:05-11:55)〜北岳山頂(12:15)〜望雲台(13:00)〜高住神社(13:25)〜豊前坊駐車場(13:30-13:45)〜別所駐車場(14:20)

曲がりくねった国道500号線沿いの別所駐車場に車を停め、県道を歩いて奉幣殿参道(石段)の途中に出る。
この参道は駐車場よりも下の「銅(かね)鳥居」から始まり、奉幣殿まで約1kmに及ぶ。朝早い時間だが参拝者も多い。
朱塗りの奉幣殿は、元和二(1616)年に小倉藩主細川忠興より寄進されたもので、国の重要文化財。左画像奥の鳥居から上に登山道が続いている。
鳥居をくぐり石段を上るとすぐに道が分かれる。直進の広い道は、中岳上宮に向かう正面登山道。今回は、右手に延びる南岳登山道に入る。
(左)南岳登山道より奉幣殿を望む。
標識が所々にあり、踏み跡もしっかりした登山道だが、人気はなくひっそりとしている。
うっそうとした杉林の中に残る石垣(右)は、かつて山中に多数立てられていたという宿坊の名残だろうか。
玉屋神社に到着。背後にそびえる高い岩壁は「般若岩」と呼ばれ、地面にほど近い窪みから清水が湧き出ている。

いくつかの祠が点在しており、少し離れた場所に祀られた「霊仙寺別院」の横には、何やら登高意欲をかき立てられる鎖場が・・・鎖の脇には「大山祇命(おおやまずみのみこと)」と書かれてある。
この大山祇命は山の精霊を総支配する神とされ、富士山浅間神社に祀られている木花開耶媛命(このはなさくやひめのみこと)の父親にあたる。

鎖は大山祇命の真下から垂れ下がっているが、真っ直ぐ上って正面でご対面するのは困難である。石像の直下は特に急斜面で足をかけられそうな出っ張りもない。鎖から離れ、すぐ右の斜面にしがみついて必死で上りきった。足元が狭く、正面に回り込む気にどうしてもなれない。
石像からは右手の細い踏み跡をたどり、もとの登山道(玉屋神社手前)に戻ることができる。鎖場を下るのは危険。
(左)路傍に祀られた古い石仏に会うのが、信仰の山に登山する楽しみのひとつ。

玉屋神社から鬼杉へ向かう道は少し荒れ気味。鬼杉の手前ではかなり急なアップダウンがあり、足を滑らせないように注意。

天然記念物・英彦山の鬼杉。樹齢は1200年、高さ38m(現在は上半分が倒れた状態)、幹の周囲は12.4m。
林野庁の「森の巨人たち100選」にも選ばれている。
ここから少し上ったところにある「材木石」(下画像)とともに、英彦山に住んでいた鬼の痕跡と伝えられる。
その昔、英彦山に住みついていた大勢の鬼が権現様から「一夜のうちに山の中に家を建てられたら住んでもよい」と言われ、ものすごい勢いで材木を運び、夜の明ける前に家を建ててしまいそうになった。権現様がタコンバチ(竹の笠)をバタバタ言わせ、鶏の鳴き真似をしたところ、夜が明けてしまったと勘違いした鬼は材木を放り投げ、山から逃げていった。また、そのとき鬼が腹立ちまぎれに地面に逆さに突き刺した杉の枝が成長し、鬼杉になったと伝えられている。
材木石の先、南側に展望が開け、岳滅鬼(がくめき)山(1037m)が眼前にそびえる。

鬼杉から材木石を過ぎ、山頂が近づくにつれて上り道はどんどん険しくなる。鎖が垂れ下がる急峻な岩場をよじ登り、やっと南岳山頂にたどり着いた。

標高1200m、一等三角点の置かれた南岳山頂。三角点手前に祀られた祠には「英彦山大権現」とある。
鶏の鳴き真似で鬼を追い払った権現さまであろう。
山頂の気温は0℃。道には霜柱が立ち並んでいる。
今回は利用しなかったが、祠のすぐ側にコンクリート2階建ての展望台があり、天気の良い日は阿蘇・九重から雲仙まで見渡せるという。
英彦山神社上宮
尾根を大きく下って上り、中岳山頂へ。上宮前からは北側の展望がよい。「英彦山山頂」の大きな標柱(右)が立つ広場で昼食にした。
この広場からは南東の展望が良く、鶴見岳、由布岳、九重山、万年山などが確認できた。

中岳山頂広場からの眺め。画像では判然としないが・・・
昼食後、北岳山頂への縦走路に入る。大きな岩が積み重なった山頂直下を慎重に下り、ブナ林の中の緩やかな道を再び上りきると、磐境(いわさか)と呼ばれる聖域が広がる北岳山頂。
ここを過ぎると、登山道は高住神社へ向けて急降下という感じで一気に下りはじめる。一部鎖場もあり注意が必要。
(左)北岳山頂直下より、犬ヶ岳を遠望。

鎖場を過ぎ、一ヶ所だけ設けられた木の階段を下ると、急斜面のガレ場に出る。上りも下りもかなり歩き辛いところ。
道の脇の巨岩からは氷柱が下がり、足元も一部凍結したところがある。気が抜けない。

危ないガレ場の斜面をようやく下りきると、「坂鉾岩」や「筆立岩」などの奇岩が立ち並ぶ異様な風景が広がる。
途中に「望雲台」への分岐がある。その名のとおりの絶景が眺められる岩場だと聞くが、まだ行ったことがない。恐いもの見たさで立ち寄ってみることにしたが、たどり着くまでのわずかな道のりも相当に恐い。
恐怖を抑えて望雲台の上に這い上がる。遠くに福智山地(左)、近くに鷹ノ巣山(中)が望まれる絶好の展望台だが・・・あまりに恐いのですぐに引き返した。
おまけに下りの方がもっと恐い。
分岐まで戻りもとの登山道を下ると、すぐに高住神社が見えてきてひと安心。神社下の「豊前坊駐車場」にある茶店に入り、ぜんざい(焼きたて餅入り)を食べて体を温めた。
ちなみに「豊前坊」というのは、むかし英彦山に住んでいたとされる天狗の名前。

豊前坊からは自然歩道を歩き、出発地点の別所駐車場に戻った。その後「英彦山温泉・しゃくなげ荘」に入浴。