山名/標高 笠(かさ)山/112m
登山日・天候 2005年1月19日(水)・曇
行程 首なし地蔵尊(12:40)〜萩観光ホテル前〜ドライブイン笠山〜虎ヶ崎分岐〜山頂駐車場(13:05)〜展望台(13:10)〜(折り返し)〜虎ヶ崎分岐〜風穴〜ツバキ原生林(13:35)〜虎ヶ崎灯台(13:40)〜コウライタチバナ自生地〜越ヶ浜浄化センター〜首なし地蔵尊(14:15)

市女(いちめ)笠
萩市の北、越ヶ浜から突き出た半島上にある山。低い標高ながら溶岩流台地の上にトロイデ式火山が乗った成層火山で、山頂には直径約30mの完全な火口があり「東洋一小さな火山」ともいわれる。遠目に見た山の形が市女笠に似ていることが名前の由来。また、かつて山上に奈古屋氏の居城があったことに由来した「奈古屋山」の別名も持つ。
江戸時代には、この山が萩城の鬼門の方角(北東=丑虎)にあたることから災厄除けのため山中に猿が放し飼いにされ、人の立ち入りが禁じられた。明治以降民有地となり、本土に面した南側は木々が伐採され市街地化・観光地化が進み、猿の姿も大正期以降は全く見られなくなったそうだが、北側の虎ヶ崎周辺に残されたツバキ原生林やコウライタチバナ自生地(国天然記念物)などが、往事の山の姿を今に伝えている。
車道の通じる山頂は公園化され、萩市街から日本海までを一望する展望台と火口巡りにふもとの明神池と風穴の組み合わせは萩観光の定番コース。昭和40年代に「発見」され、保護と整備が行われてきたツバキ原生林も、毎年2〜3月に行われる「椿祭り」が定着してきたことで次第に知名度が上がってきた。
「笠山自然研究路」は、笠山山頂を経由して半島の約半分(東側)を周回する道で、道のあちこちに案内標示や説明板が立てられ、一部滑りやすい場所もあるが標高差も僅かで「登山道」というほどではなく、笠山の知られざる豊かな自然に触れることのできる面白い遊歩道である。笠山山頂までのドライブに飽きた人は、ぜひ一度歩いてみることをおすすめする。

国道191号線(萩市大井浦付近)からの眺め。

国道191号線から明神池のほとりを抜け笠山山頂へ続く上り坂の途中で「首なし地蔵尊」方面に右折し、数十mで広い駐車スペースに出る。片隅に建つ地蔵堂の近くにも登山道がある(自然研究路と合流する)が、今回は分岐点まで戻り、いつもの車道を上っていくことにした。
平日で車の往来は少なく、道端の土産物店も閑散としている。
軒下に干しイカがぶら下がるこぢんまりとした「ドライブイン笠山」のすぐ側に自然研究路の標識が立つ。
ここから地道に分かれ、椿の古木や自生?の夏ミカンなどが生い茂る雑木林をくぐり抜け、首なし地蔵尊からの上り道と合流する四叉路に出る。直進方向で虎ヶ崎だが、まずは左折して階段状の急坂を数分で、喘ぐ間もなく車道終点の駐車場に出る。
駐車場から階段を上り「笠山山頂園地」へ。
112.2mの三等三角点は火口を一周する歩道の途中に置かれているということだったが、この日は歩道も火口もロープが張られ立入禁止となっていた。昨年の台風で道が崩れたのだろうか。
三角点は諦め、それよりも高い3階建ての展望台へ上がってみた。平日でがら空きだが、北西の冷たい風が吹きつけ、のんびり眺めを楽しむ気にはなれない。写真を撮り、すぐに広場を下り駐車場へと戻った。

時折日が差し込むも風が強く、寒々とした冬の日本海。
山道を四叉路まで下り、虎ヶ崎方面へと向かう。道の両側に築かれた石垣とその向こうに並ぶ実を付けた夏ミカンが「萩の山」を強くアピールする。
ここからの山道は海辺の虎ヶ崎まで緩やかに下っていくばかりなので「山行」と呼ぶにはあまりにも物足りないが、進むにつれて深くなる森に息をのみ、道端に開いた風穴から流れ出てくる冷気(真冬では何も感じないが)を浴びながらの散策は楽しい。
森の木々は基本的には暖流の影響を受けた南方系の植生だが、風穴からの冷気により寒地性の植物も一部に自生している。この小さな山の中には、展望台からは見えないたくさんの見所がいくつも転がっている。
昔から森の中で目印にされていたという大クスノキを過ぎると、まもなく遊歩道が整備されたヤブツバキ原生林の中に出る。開花時期にはまだ早いが、椿の木の下には最近咲いて落ちたと思われる花がたくさん散らばっていた。12月中旬までのポカポカ陽気で一時的に開花したのかもしれない。
(右)冷たい風の中、白い虎ヶ崎灯台が熱燗徳利に見えた。

虎ヶ崎から萩沖の六島を望む。平たい台形の火山島がずらり並んでいる様子は空母の整列を思わせる。
虎ヶ崎からは海沿いにつけられた平坦な歩道を行く。コウライタチバナ自生地を過ぎ、真横に見えていた六島が背後に回り込むのと入れ替わりに、入江の向こうに高くそびえる遠岳山が目に飛び込んでくる。
(左)大島の最高地点は112.6mで笠山とほぼ同じ高さ。
遊歩道は突如という感じで途切れ、空き地の向こうに越ヶ浜浄化センターの管理棟が見えてくると、出発地点の首なし地蔵尊はもうすぐ。