山名/標高 御前(ごぜん)岳/1209m
釈迦(しゃか)岳/1231m

※"釈迦ガ岳"と表記することもある。
登山日・天候 2005年10月1日(土)・晴
行程 杣の里渓流公園(08:00)〜林道出合〜登山道入口(08:50)〜御前岳(09:20-09:30)〜田代コース分岐〜展望岩(10:15)〜釈迦岳(10:30-10:35)〜普賢岳(10:45-11:00)〜矢部越(11:25)〜杣の里渓流公園(12:10)
御前岳・釈迦岳は、福岡県と大分県の境界に連なる津江山地を代表する山。標高1231mの釈迦岳は津江山地の最高峰であるとともに福岡県の最高峰ともなっている。
大分県では「権現岳」とも呼ばれる御前岳は、「日本書紀」にある景行天皇の九州征西(第一期?熊襲征伐。皇子である日本武尊の熊襲征伐はこの後)の項に「前山」として記されており、これが「御前岳」の名の由来。山頂にはこの故事に因んだ石碑が建てられている。
日本書紀の記述ではさらに「十八年七月、前山ヲ越エ栗崎ヲ望ミ山峰重塁美麗ニ感ジ其の中ニ神ハ有ルカ、彼曰ク女神有り其ノ名ヲ八女津媛(ヤメツヒメ)卜云フ常ニ山中ニ居ル、故ニ八女ノ国ノ名、此ノ故ナリ」とあり、現在の「八女」の地名の発祥とされる。矢部村にある「八女津媛神社」は養老三(719)年の創建と伝えられている。
釈迦岳の山名は、英彦山の山伏が釈迦如来を山頂に勧請したことに由来するもの。屹立した岩峰の山頂部には新旧二体の釈迦如来像が安置され、隣接するなだらかな第二ピークは「普賢岳」と呼ばれる。普賢岳の頂上には雨量計測用のレーダードーム(右画像)が置かれ車道が通じ、周囲の山々を見渡す好展望地となっている。
登山道は、矢部村の「杣の里渓流公園」内にある登山口から御前岳〜釈迦岳を縦走する周回コースのほか、大分県日田市(旧前津江村)からシオジ原生林を経て御前岳山頂に出る通称「田代コース」もある。

御前岳・釈迦岳への矢部村からの登山口は、村の中心から村道を北東へ約5kmの場所にある「杣の里渓流公園」の一隅にある。ただしこの公園には「登山者の方の駐車はご遠慮ください」の看板があり、登山者の多くは登山口付近の路肩に駐車しているようである。
今回は渓流公園の手前数百mの駐車スペースを利用。「あいのひめ橋」が交差する道路端の広場に白線(手書き)が引かれただけの怪しげな駐車場(十数台分のスペース。工事関係者用か?)だが、とりあえず車を置いて登山口へと向かう。舗装路とはいえ上り坂の勾配は結構きつい。
ちなみにこの「あいのひめはし」の表札文字は栗原小巻の筆によるもの。
登山口の標識に従い、コンクリート舗装された道に入ると、道はすぐに沢に沿った荒れ気味の踏み跡となる。
途中で何度か沢を渡ることになるが、渡渉ポイントが分かりづらいところもいくつかある。「道がなくなった?」と思ったら渓流の向こうに新しい道を探してみること。テープの類はほとんど目につかない。
沢をはずれ、急坂をひと登りで林道に出る。
道は「峰越林道」方向に上り勾配となっているが、ここでは標識に従い「御前岳・釈迦岳」へと下り方向へ数十m進み、次の標識に沿ってまた登山道に入る。
入口の表示によると、最初の登山口からここまでの距離はまだ1km。ずいぶん歩いたような気がするが・・・。
第二登山道に入ると、いきなり植林帯の中を急登。
木々が途切れると、目の前には枯木を頭に立てた大きな岩がそそり立つ。側に転がる岩に座ってひと息ついた後、今度はこの大岩の脇に垂れ下がる鎖とロープを掴み、さらによじ登っていくこととなる。鎖場はすぐに終わるが、山頂までずっと急登が続き気が抜けない。
10月に入ったにもかかわらず相変わらず気温が高く、タオルが絞れるほどの汗をかいて山頂に到着。
「景行天皇御遺跡」の石碑が建つ山頂からは、ほぼ360度に展望が開ける。
大分と熊本の県境に接する矢部村は阿蘇・九重にも意外と近い。
次の目的地、釈迦岳と普賢岳の向こうに見えているのは九重の山々である。
南東〜南西にかけての眺め。

この地域の山々についてはほとんど知識がなく、彼方に浮かぶ九重山や阿蘇五岳(左)、普賢岳(右)くらいしか同定できない。

北西〜北東にかけての眺め。

古処・馬見山地から英彦山、犬ヶ岳(左)と、こちら側には見知った山々が多い。しかし由布岳(右)まで見えたのにはびっくり。

御前岳山頂から少し下り、釈迦岳への縦走路に入る。
道はすぐに日田市前津江の田代コース(シオジ原生林)と分岐。そのまままっすぐ進み、気持ちの良い自然林の間を進んで行くと、釈迦岳ピークの手前で左に細い踏み跡が分かれる。この道に入り少し上ると、狭いが展望の良い岩場に出る。

岩場からの眺め。釈迦岳と御前岳を含め、周囲の山々を一望できる絶好の展望台。
釈迦岳ピークの手前は、ロープがつけられた急坂。ここをよじ登ると福岡県の最高地点、二体の釈迦像が出迎える釈迦岳山頂である。
山頂からの眺めは木々に遮られて充分ではないが、手前に普賢岳、その向こうにハイランドパークと渡神岳、さらにその奥に九重連山が浮かぶ東側の眺めが素晴らしい。
新・旧お釈迦さま比べ。新しい方の気品ある整った顔立ちに対し、古い石像は表面が摩滅し表情は全く残っていない。あるいは元からのっぺらぼうだったのかも?しかし、この素朴さに味がある。

釈迦岳山頂から道を下り、「マイクロウェーブ展望台」の標識に従って少し進むと、舗装路に出る。左手には大きなレーダー施設がそびえ立ち、特撮映画のオープンセットに入り込んだような気分。

レーダーが建設され周囲が切り開かれているだけに、普賢岳の展望は非常に良い。
手すりとベンチが置かれた展望台からは、阿蘇・くじゅう・由布岳などが今まで以上によく見える。阿蘇のそばに祖母・傾の稜線も確認できた。

中央手前から渡神岳、湧蓋山、その奥に重なるように九重連山がそびえる。左は万年山、その奥に由布岳。
展望台で眺めを楽しみゆっくり休んだ後、登山道の分岐まで戻り下山開始。下りを20分ほどで大分との県境、矢部越にでる。
ここからは舗装された林道がふもとまで続いているが、道が曲がりくねっておりそのまま辿るとかなりの距離となる。登山道は大きく蛇行した林道を串刺しにする形でまっすぐつけられており、かなりショートカットできる。途中3〜4度道路を横断し、渓流公園の1.5kmほど手前から舗装路と合流する。
林道の向こうに、渓流公園の大吊橋が見えてくるとひと安心。公園の周りの路上には、朝にはなかったたくさんの車が停まっていたが、みな登山者の車だろうか?
・・・謎の駐車場には、自分のほかにもう1台の車が停まっているだけだった。
帰りは大分から熊本へ県境を越え、杖立温泉に入浴。