山名/標高

縦走路から望む大万木山
大万木(おおよろぎ/おおまんぎ)山/1218m
草ノ城(くさのじょう)山/976m
琴引(ことびき)山/1014m
登山日・天候 2006年10月8日(日)・曇のち晴
行程 権現コース入口(08:05)〜山頂展望台(08:55)〜大万木山山頂(09:05)〜渓谷コース分岐(09:20)〜草峠(10:20)〜和恵展望台(10:40)〜草ノ城山(11:05)〜琴引山神社〜琴引山山頂(12:30-13:00)〜フォレストパーク駐車場(13:50)
島根県飯南町(旧頓原町・赤来町)、雲南市(旧吉田村)と広島県庄原市(旧高野町)の県境沿いに連なる標高1000m前後の山群とその裾野の山林は、「島根県県民の森」として登山道、林道やキャンプ場などが整備されている。
大万木山は、一般に島根県側の呼称「おおよろぎ」が用いられることが多いが、広島県側では「おおまんぎ」とも呼ばれている。山名の由来は、昔この山が大きく揺れ動いていたため「ゆるぎ山」と呼ばれていたのが転じたとも言われる。山頂への直登ルート「権現コース」の中ほどには、このゆるぎを鎮めるために祀られたという大万木権現の祠が建てられている。
登山コースは権現コースを含めて3つあり、ほかに毛無山や等検境、琴引山からの縦走路も延びており、様々なルートバリエーションが楽しめる。山頂のブナ純林をはじめ全山が広葉樹に広く覆われ、新緑や紅葉期は多くの登山者でにぎわう。
「弥山」の別名を持つ琴引山は、大国主命が山中の石窟で琴を弾きながら政務を行っていたという伝説が山名の由来。北西斜面に建設された「琴引フォレストパーク」は、世界で初めてICS(人工降雪機)を導入したスキー場として知られる。
琴引山への登山ルートは、上述のフォレストパークやその近くにある敷波地区など、旧頓原町側がよく知られているが、県民の森として整備された旧赤来町側にもルートが開かれており、山頂付近で分岐している。また大万木山へと向かう縦走路も同じ場所から分岐している。分岐点の標識は分かりにくく、書かれた地名だけではどちらに行くのか判別が難しい。

島根県県民の森ホームページ...http://www.chusankan.jp/mori/tozan/index.html

縦走の起点となる大万木山には、旧頓原町の舗装された林道沿いに3つの登山口があり、低い方から順に「渓谷コース」「権現コース」「滝見コース」と名付けられている。
林道の終点、広い駐車場が滝見コースの入口だが、案内板には「台風のため倒木、路肩崩壊などがあり通行は控えてください」との注意書きがあったため、100mほど下った権現コース入口から登ることにした。
石の鳥居をくぐり、薄暗い樹林帯に入るとさっそくジグザグの急登がはじまる。あとでガイドブックを見ると、渓谷コース、滝見コースがそれぞれ渓流に沿ってつけられた比較的緩やか?な登山道なのに対し、権現コースは直登の急坂コースで「下りに利用した方がよい」とのこと。登る前によく調べておくべきだった。
天気予報では次第に晴れてくるはずだが、山の上にはまだもやが残っており、上るにつれて周囲にガスがかかりはじめた。
「権現コース」というくらいで、登山道の途中には権現社があったらしいのだが、急坂に喘いでいるうちに見過ごしてしまったようだ。
傾斜が緩やかになると間もなく展望台に到着。晴れた日は遠くに大山も望めるという。この日はガスに覆われ何も見えなかった。
山頂はブナを中心とした広葉樹林の森となっており、展望は全くない。二等三角点のある広場からは四方に道が延びており、琴引山への縦走路もすぐに見分けられる。琴引山頂までの距離は9.3km。予想以上に長い。
稜線上の県境に沿ってつけられた縦走路は整備がよく、標識も整っているので「琴引山山頂手前まで」は道に迷うこともなく快適に歩いていくことができる。
大万木山の方が琴引山に比べ約200m標高が高く、大万木→琴引へと縦走路を辿った方が上りが少なく歩きやすい。
(右)画像の大階段は、琴引山から縦走してきた場合、301段のキツイ上りとなる。

稜線を覆っていたガスが次第に晴れ、後方に大万木山(画像いちばん左)が姿を現しはじめた。
比婆山など遠くの山々の稜線も光の中に浮かび上がってきた。
しばらく進むと右手(北側)下方に舗装された林道が並行しはじめた。この林道は旧頓原町と旧赤来町を結び、山腹を縫うようにつけられ縦走路と2度交差する。
大万木山からの最初の交差点「草峠(くさんだわ)」付近からは北西にそびえる三瓶山の眺めがよい。峠のピークには、島根・広島の県境を分かつように地蔵尊が祀られていた。
縦走路と林道が交差する場所は以前はここだけだったが、のちに林道が延長され、琴引山方面に約1km進んだ次の交差点には駐車場や東屋が設置され、和恵(=わえ。地名だろうか。ここから琴引山までの縦走路も和恵縦走路と呼ばれている)展望台と名付けられている。
(左)草峠から和恵展望台までの縦走路は、コース全体の中でも荒れ気味に感じた。新たな林道が開通して利用者が減ったからだろうか。

(右)和恵展望台からは、意外にも三瓶山は見えなかった。

(左)縦走路の途中、小高いピークの上にぽつんと立てられた草ノ城山の標識。この地味な山頂は迂回することも可能。あえて避けるほどのメリットがあるとも思えないが。

天気がぐんぐん回復してきた。ブナ林に木漏れ日が差し込み、色褪せはじめた葉の間からのぞく青空がまぶしい。琴引山頂からの大展望に期待が高まる。

琴引山山頂直下、ほぼ樹林帯に囲まれていた縦走路の視界が急に開け、ササ原の中に出る。道は二手に分かれ、右が「頓原方面」左が「琴麓方面」とある。実はササ原の右手にある小高いピークが琴引山頂なのだがそれと気づかず、「琴」の名がある左の道を進み、変だぞと思い引き返すこと2回(下山時にも間違えた)。
町外から初めてやって来て、大万木山から縦走してここまで来るという登山者は想定していないのかもしれないが、この日少なくとも我々以外にもう1人迷っている人がいた。「琴引山山頂方面」「スキー場方面」など、非地元民にも分かりやすい表示を加えてほしい。 
(出雲国風土記・原文)
琴引山。郡家の正南三十五里二百歩。高さ三百丈、周り十一里。古老の伝えて云はく、此の山の峯に窟有り。裏に天の下所造らしし大神の御琴あり。長さ七尺、広さ三尺、厚さ一尺五寸。又、石神在り。高さ二丈、周り四丈。故、琴引山と云ふ。

(口語訳)
琴引山。郡役所の真南19.1km。高さ891m、周囲5.9km。古老が伝えて言うことには、この山の峰に岩屋がある。中に天の下をお造りになった大神(=大国主命)の御琴がある。長さ2.1m、幅89.1cm、厚さ44.6cm。また石神がある。高さ5.9m、周り11.9m。だから、琴引山という。

(講談社学術文庫より抜粋)
琴引山神社の脇から「山頂まで50m」の標示に従い急坂をよじ登ると、岩の上の狭い山頂に出る。
一等三角点、360度の大展望だが遠くは霞んでおり、西中国山地も日本海もぼんやりとしか見えなかった。天気のいい日は隠岐まで見渡せるということだが・・・

(左)北西方向の眺め。


北から東にかけての眺め。
山頂から引き返し、琴引山神社の前を下って行くと道はすぐに二股に分かれ、直進の細い道が敷波登山口、左に下っていく道がフォレストパークへの下山路となる。しかしここの表示も分かりにくい。「スキー場方面」と書いてあれば一目瞭然なのだが。
フォレストパークへは、大神岩や弦の清水を眺めつつ樹林帯を下り、40分足らずでススキの原(まだ雪のないスキー場)に出る。
下り斜面の先にはスキー場の諸施設、その向こうの山々の上に、ひときわ高く三瓶山が顔をのぞかせている。
道は途中からマットの敷かれたゲレンデに代わり、靴裏の泥を落としながら駐車場に到着した。
ちょうど入れ替わりに観光バスから降りた団体が琴引山に登っていった。山頂での人の入れ替わりが大変だろう。いやそれより、こんな時間から登りはじめて大丈夫・・・?