山名/標高

道後山からの眺め(2007.08)
猫山(ねこやま)/1196m
登山日・天候 2013年11月2日(土)・晴ときどき曇 
行程 登山口(11:05)〜リフト終点(11:25)〜山上さん(11:30)〜山頂・展望台(12:00-12:10)〜(折り返し)〜登山口(12:50)

道後山クロカンパークからの眺め
(2007.08)
猫山は道後山の南に相対する独立峰で,庄原市広域合併前は旧東城町・西城町の境界となっていた。
山名の由来については「山容が猫の寝姿に似ているから」「山中に猫に似た石がある」など諸説ある。江戸時代後期に向永谷村(現・福山市)の庄屋・馬屋原重帯が著した備後全域の地誌「西備名区」には「此山高き事五十余町、周廻三里なり。伯州大山を眼下に見る絶景なり。里諺に云、米皮俵を背おふて一日の中に三度廻り猫の真似をすれば山中の石悉く化して猫となる。よって山に名付くと云」とあり,山全体が猫神信仰の対象であったことが伺える。
また,猫山は豊富な鉄を含み,タタラ製鉄が盛んであった中国山地の中でもとくに活況を呈していた。「西備名区」の時代,山は鉱石の採掘と木炭用材の伐採が行われ,山頂は大山を含み広く見晴らしがきき,狼煙場としても利用されていた。鉄は山岳修験とも関係があり,山の中腹には山岳修験の祖,役小角(えんのおずぬ)を祀った石仏三体が置かれ,「山上さん」と呼ばれている。
登山道は,北麓の「猫山スキー場」からゲレンデ脇を上り,「山上さん」を経て山頂に出る往復コースのみ。途中のスキーリフト終点と山頂付近の展望所以外に眺望はなく地味な山だが,比婆山,道後山の間に埋もれ登山者も少ないので,静かな山行が楽しめる。

猫山登山口は,北麓のスキー場「スノーリゾート猫山」のすぐ近く。国道183号線から市道に入り,スキー場手前の空き地の隅に小さな案内標識がある。雑木林の中の踏み跡をたどって行くと周囲はやがて植林帯に代わり,左手には木の間越しにスキー場のゲレンデ(この時期は草斜面)が見える。ここからはゲレンデに並行した直登路だが,比較的傾斜の緩い初・中級コースなので上りもそれほどきつくない。
しばらく快調に高度を稼いで行き,左手の視界が開けるとリフト終点。ゲレンデに出ると三坂の集落とその背後にそびえる道後山が一望できる。
登山道はここから右に山腹を巻くルートとなる。少し進むと木立の中にトタン葺きの小屋(のようなもの)が現れるが,後ろに回ると小屋ではなく,風や雨・雪から「山上さん」を守るための壁と庇であった。山上さんは役小角に関係するとされる3体の石仏で,大岩の足下に静かに佇んでいる。
巻き道が終わり,再び尾根直登路となる。今度の尾根道は前半の緩斜面とはうって変わり,かなりの急坂で息が切れる。
展望はほとんどきかないが,紅葉が多く目を楽しませてくれる。山頂二等三角点の周囲も黄葉したブナに囲まれ,心地よい空間である。

山頂から南に数十m進むと展望地に出る。「西備名区」に書かれた大山方面は見えないが,南から西にかけてパノラマが広がる。
眼下の小奴可(おぬか)地区は,かつてタタラ製鉄で大きく栄え「同じ住むなら猫山三里」といわれていた地域。
特に案内はないが,展望地の先にある第二ピーク(小さな猫耳!)にも踏み跡が続いており,歩いて行けそうな感じだった。

第二ピークの右手,西に連なる山々の奥に比婆山の稜線が横たわる。週末・紅葉・晴天で比婆山上はさぞや賑わっているだろう。