山名/標高 中山仙境(なかやませんきょう)/317m
登山日・天候 2013年11月26日(火)・晴ときどき曇
行程 霊仙寺登山口(12:20)〜無明橋(12:45)〜夷耶馬(13:00)〜隠洞穴(13:20)〜下山口(13:30)〜霊仙寺登山口(13:40)
中山仙境は旧香々地町の南部,奇岩怪石が立ち並ぶ景勝地「夷耶馬」の一角にある岩峰群の総称で,317mの最高地点は「高城」あるいは「夷耶馬」と呼ばれている。
修験道の霊場として開かれた山で,国東地方に点在する「無明橋」のひとつがここにもあるほか,「馬の背」と呼ばれるヤセ岩尾根や鎖場など,岩稜上には危険箇所が続出するため,細心の注意を払って通行したい。過去には滑落死亡事故も起きているという。
登山口は霊仙寺前の河川プールのほか2〜3箇所存在するが,事故防止のためいずれも一方通行となっているようである。(左画像:クリックで拡大表示)

霊仙寺の向かいにある河川プール前の広場から出発。
登山道は取りつきがやや荒れ気味で薄暗く,先行きが心配になったが,尾根に出ると明るくなり,標識類も増えて歩きやすくなった。
路傍の石仏に「中山仙境第○番札所」の表示があるが,番号の消えたものもあり全部でいくつあるかは分からなかった。
霊仙寺は718(養老2)年に仁聞菩薩によって開かれたといわれ,最盛期には十二坊を有し,六郷満山の中でも屈指の大寺だった。明治の神仏分離令で切り離される以前の霊仙寺は,講堂が隣接する六所神社拝殿の位置にあり,隣の実相院を支院とする神仏習合の形式をとっていたという。
境内には九州随一の巨大な地蔵尊が鎮座し「願かけ地蔵」として地域の信仰をあつめている。
尾根に出て間もなく「無明橋まで500m」の案内があった。すぐ着くだろうと思っていたが,尾根道はアップダウンが大きく,予想以上に時間がかかる。まだかまだかと歩いていると,頭に石板を乗せた二つの岩の前に出た。・・・これが本コースのハイライトのひとつ,無明橋。
上に立つと,左側は目のくらみそうな断崖絶壁だが,右側にはしっかりした道がついているので,想像していたほどの恐怖感はなかった。
(左)無明橋を渡って振り返ると,麓の霊仙寺から香々地の町を経て周防灘まで一望。橋の下が写っていないと,とんでもない場所に立っているように見える。
中山仙境の核心部は無明橋からはじまると言って良く,ここから先は鎖の付けられた岩稜のアップダウンが連続し,気が抜けない。
(右)鞍部に大きく下ると,樹林帯の中にも小さな無明橋があった。
頂上に石碑の建つ317mピークも,鎖場をよじ上った先にあった。石碑の足下に「夷耶馬317m」の小さな標柱,傍に2体の石仏を納めた石祠。
山頂はあまり広くないが360度に視界が開ける。東に連なる岩山の上には先ほど登った千燈岳のピークが顔をのぞかせていた。
北に遠望する周防灘の向こうには本州の長い島影。海辺に見える白い点は,阿知須きららドームか。
視線を下げると,谷底から生えてきたような奇岩が屹立する風景に息をのむ。断崖のあちこちに色を添える紅葉が美しく,こちらも絶景である。
山頂の先も岩尾根伝いに細い道が続き,「馬の背」と呼ばれる岩稜から一気に降下,隠洞穴を見て県道脇の下山口に出る。起点の駐車場までは車道を1km弱歩くことになるが,霊仙寺や実相院の周辺も岩と紅葉のコントラストが美しく,退屈することがなかった。