第6回立山登山マラニック (2003.09.06)

04:00
浜黒崎キャンプ場
朝4時、暗い海をバックにかけ声一斉、松明を手にした松原委員長の先導で、立山(雄山)山頂へ出発。ヘッドライトを準備してきたのだが、「大会本部で懐中電灯を貸してくれる」との話を聞き、レースには持参しなかった。実際、本部受付で懐中電灯(マグライト)を貸してもらえた。
05:44
雷鳥大橋
キャンプ場のすぐ側で海に流れ込む常願寺川の河川敷に沿ってひたすら走る。所々に水たまりのある砂利道。遠くに街明かりが浮かぶ。コースはほとんど平坦・まっすぐで、空が明るければ相当に苦手な道だが、足下しか見えない状態では気にしようがない。空には星もなく、厚い雲がかかっていると思われる。やけに湿り気を帯びた風が吹き、いやな予感がつのる。
5時を過ぎるとだいぶ周囲が明るくなり、遠くまで見えるようになってきたが、空は一面どんより。立山があると思しき方向に目を向けると、大きな山の影のようなものがぼんやり浮かんでいる。
併走する原田さんはというと、近くの女性ランナーに「あれが立山ですか?」と質問中。さすが・・・・・。
06:04
岩峅(いわくら)寺雄山神社
スタートから19km地点にある岩峅寺雄山神社の鳥居の下に設けられた公式の第1エイドに到着(10km付近に非公式?の給水ポイントあり)。
結構蒸し暑いので、夜の明けないうちからここにたどり着くまでにも、かなり汗をかいた。エイドに置いてあったレモンをコップの水に搾り、一気に飲み干す。
ここまでほぼ平坦だった(実際はじわじわと上り続けていた?)コースは、エイドを過ぎ、橋を渡るとにわかに上り勾配となる。とは言っても傾斜は比較的緩やか、体力にもまだ余裕があるので、ペースを落としつつ走り続ける。ここでもまだ、原田さんと併走。
河川敷沿いではまったくお目に掛かれなかった自動販売機が、道端にはじめて姿を見せた。自分も含め、何となく「違うもの」が飲みたくなったランナーたちが一斉に群がるが・・・残念、すべて「売切」。またしばらく行くと、今度は全品取りそろえた自販機に遭遇。真っ先に押したボタンは「アスパラドリンク」。はたして効き目の程は?
また少し進むと、ワゴン車の横にキャンプ用テーブルを並べた施設エイド。どうやら奥さんがレースに参加し、ご主人が子ども連れでエイドを開いている模様。ご苦労様です。
第2エイドを過ぎたころから、次第に勾配がきついところが出はじめた。腹も空いてきたので、持参した携帯食料をかじりながら歩きを入れる。気がつけば原田さんと数百m差。
07:41
芦峅(あしくら)寺

07:49
立山大橋

大山寺周辺と似たような雰囲気が漂う芦峅寺にも雄山神社が祀られているが、この神社は立山そのものをご神体とする三社の総称で、雄山山頂3003mの岩の上に建つ本社、ここ芦峅寺の中宮(祈願殿)、岩峅寺の大宮(前立社壇)に分かれている。また、中宮の隣には立山博物館が建ち、有名な「立山曼陀羅」が展示されている。
ここを過ぎると道は久しぶりに下りに転じるが、長くは続かない。すぐに右折し、常願寺川を遥かに見下ろすアーチ橋の立山大橋を渡る。その先はまた上り坂。右手には立山山麓スキー場のゲレンデ。もうすっかり山の中だが、立山山頂にはほど遠い。残り標高差も、考えたら引き返したくなるくらい残っている。
原田さんの姿は、すっかり見えなくなっていた。
08:22
立山駅前
「立山駅エイドまで2km」の案内と、左折の指示。その先はまた上り坂だが、少し進むとすぐに下り坂となる。立山駅手前の橋まで、ずっと下り。
この大会のコース中、ここがいちばん好きな区間。
たどり着いた駅前のエイドで原田さんと再会。思ったほど距離が開いてなかったのか、それとも待ってもらったのか・・・どうも後者のような気がするが、ともかく並んで出発。
駅の手前から少し気になっていた雨が、駅を出て1km行くか行かないかの間にどんどん大粒となり、勢いを増してきた。ゴミ袋をかぶり先へ進むが、なんとなく意気消沈気味でまた歩きが入る。原田さん、再び先行。
09:07
有料道路入口

09:45
称名滝エイド

雨に打たれながら国立公園エリアに入る。晴れていたらガスの向こうに立山が見えるのだろうか、などと考えている余裕はそのときにはなかった。リタイアする気はなかったけれど、ひょっとすると「時間切れ」はあり得るかも、と思いながら時計を見ると、まだ9時。いや、もう9時というべきか。ここ、何km地点だっけ?称名滝まであとどのくらい?制限時間は?全然覚えてない。
有料道路入口前の自販機。お茶は1本持っているが、今飲みたいのは炭酸飲料。「調子悪いときはコーラ」という、ホトトギスさんの言葉を思い出す。350mlの炭酸飲料をほとんど一気飲みしてしまった。
またしばらく歩くと、蓋のない側溝をバナナの皮が流れてゆく。こりゃきっと称名滝エイドが近いものとばかり思っていたが、その先に現れたのは私設エイド。またペースが落ちる。道路の傾斜もさらにきつくなった。
やっとのことでたどり着いた称名滝エイドで、原田さんと再会。思ったほど距離が開いてなかったのか、それとも・・・(以下略)。
マラニック用に開放されたレストハウス内で上衣を長袖Tシャツに着替え、ゴミ袋をビニール合羽に交換。称名滝前で記念撮影後、八郎坂に取りつく。
10:10
八郎坂

11:05
弘法エイド

登山マラニックの43km過ぎ、全コースの2/3くらいでようやく現れた本格的な登山道。それにしても、すごい急坂。木組みの階段や岩を足がかりに、標高差約500mと言われるつづら折りの山道はいつ果てるともなく続き、周囲を眺める余裕さえない。称名滝の展望ポイントもいくつかあったが、ほとんどはガスがかかって何も見えない状態だった。
こんな急坂にも関わらず(それ以前にこんな距離・コースにも関わらず)、八郎坂を上っている盲人ランナーがいる。もちろん伴走の方も一緒だが、いったいどんな指示を出して山道を歩いておられるのか、謎である。
どのくらい上った後だったか、道端に立っていた1人のスタッフの方が「あともう少しで弘法エイドです」と声を掛ける。「ああ、良かった。やっと山道が終わる」と喜んだのもつかの間、その「もう少し」を歩いても、「もう少し」の倍くらいを歩いたつもりになっても、弘法エイドは全く見えてこない。相変わらずのつづら折り。その先に立っていた別のスタッフの方が、また同じことを言う。「もう少し」。
「もう少しって、具体的にあと何km?」
と聞き返したいが、もっと疲れそうなので止めた。
それからまたしばらく歩いて、やっと弘法エイドに到着。
何となく耳に入ってきていたが、今回のレースは悪天候のため室堂で打ちきるということを、ここではじめて公式に聞いた。残念、と言いたいが実はホッとした気分の方が強い。
12:04
弥陀ヶ原エイド
弘法エイドからは車道に出る。コーナーが連続する上り坂。この車道は観光バスやトラック、作業車専用だが、道の脇には木道が敷かれ、称名滝〜八郎坂から室堂までの登山道にもなっている(マラニックでは舗装路の左端を通ることとされている)。
少し歩いてみてびっくり。アスファルト脇の草むらからは、あきれるほど無造作に多くの高山植物が顔を出している。標高1500mでは、道端の雑草も高山植物なんだなぁと、思わず感心してしまう。例によって名前は判らないが、とりあえず片っ端から写真に収めてゆく。そうやって原田さんに先行されては、すぐに後を追いかける。自然に早歩きとなる。
また違う花を見つけ、身をかがめてカメラを構える。側を通りすぎるランナーの方が「余裕ですね」と笑う。実際は余裕ないんですけど・・・
弘法エイドから弥陀ヶ原エイドまでは4kmと聞いていたが、この4kmが長かった。ほぼ1時間かかってしまった。弥陀ヶ原から次のエイド、いや、ゴールとなった室堂までは8km。この調子では2時間かかってしまう。少しペースを上げねば・・・

道端で見つけた花たち
13:21
天狗平バス停

13:40
室堂バスターミナル前

ずっと腕を振り続けていたためか、左肩から首筋にかけてひどく痛みはじめた。原田さんのすすめで、例の痛み止めを服用。ゴールするころにはすっかり痛みはひいていた。さすが・・・・・
霧に包まれた高原道路は道端の花と湿原以外に何も見えず、同じようなカーブが右・左に交互にくねりながら、どこまでも上に向かって続いてゆく。ときどき霧の中から眼を光らせたバスの巨体がぬっと現れ、横を通り過ぎてまた霧の中に消えてゆく。車体を見ると「低公害仕様」とある。確かに黒煙も臭いも、そこらのバスに比べればずっと少ない。せめてもの救いである。
延々と同じ道を歩き続けているうちに、なんだか頭がぼんやりし始めた。少し遅れはじめた原田さんも「眠くて蛇行してしまう」とのこと。こんな霧の中を頻繁にバスやトラックが行き交う路上で蛇行するのは、かなりヤバい。あの世みたいな風景からそのままホントにあの世行きである。ゴールはまだか〜・・・
やがて、霧の中からバス停の表札が姿を現した。表札を読むと「賽の河原」と書いてある・・・なんてことがあったら笑うに笑えないが、幸いなことにこのバス停は「天狗平」。路線図を見ると、次はお待ちかねの「室堂」である。
2人とも、やっと元気を取り戻した。
やがて、霧の向こうから歓声が聞こえてくる。「もしかしてゴール?」原田さん、いきなりラストスパート。その後を小走りに追うと、テントがあり、スタッフがいて、ランナーが椅子に座って休んでいる・・・ゴールだ!!
スタートから約9時間40分、山頂にはたどり着けなかったものの、標高差2450mを無事完踏。
しかし、バスの中で服を着替えて外に出たところで衝撃の事実を知らされる。ここから「雷鳥荘」までは、さらに歩いて30分の道のりだと。。。
20:00
雷鳥荘「完走祝賀会」
もともと定員100名としていた本大会だが、年々エントリーが増えているのだろう、今回は200人近い参加者が雷鳥荘に入ってきたので、1部屋に6人詰め。ハイシーズンの山小屋ほどではないが、布団を敷くと荷物の置き場もほとんどない。夕食も並んで待たないと席が取れない。
完走祝賀会も、食堂だけでは席が足りず、隣の小部屋まで開放、それでも実行委員やボランティアの人は座ることができない状態だった。最後の最後までお疲れさまでした。
いつの間にか雨は止み、霧も晴れて空には月が浮かぶ。翌日は晴天になるとの情報を得たので、朝5時に起きて雄山頂上を目指すことにした。

翌日の雄山登山記はこちら