山名/標高 九重(くじゅう)山
 大船(たいせん)山/1786m
 北大船(きたたいせん)山/1706m
 平治(ひいじ)岳/1643m
登山日・天候 2007年10月28日(日)・晴
行程 男池(06:40)〜かくし水(07:10)〜ソババッケ(07:30)〜風穴(08:30)〜前せりコース分岐(09:00)〜御池(10:00-10:20)〜大船山(10:30-10:40)〜段原(11:00)〜北大船山(11:15)〜大戸越(11:55)〜平治岳(12:30-12:35)〜大戸越(13:10)〜ソババッケ(13:50)〜男池駐車場(14:35)

男池駐車場には前夜のうちに入って、車中泊。翌朝出発時に見ると、7時にならないうちから駐車場の3/2くらいがすでに埋まっていた。ただしほとんどは黒岳へ向かうようだった。
空は雲一つない晴天。駐車場の上に見える平治岳山頂部はすっかり紅葉し、朝陽を浴びて真っ赤に燃えていた。
入山者がまだ少ないうちに急いで支度をすませ、登山道に入った。
山の上の紅葉は間違いなくピークだが、男池周辺の原生林の色づきはまだこれからといった感じ。森にはまだ陽射しが届かず、ソババッケに出ても薄暗い。平治の山頂だけが相変わらず陽を浴びてキラキラ輝いている。
ソババッケから風穴に向かうと、次第に周囲の紅葉が鮮やかに色づいてきた。木々の枝越しに見える黒岳の山肌も極彩色のパッチワーク。
秋が深まり、涼しさを感じなくなった風穴。黒岳、大船山(段原に出るルート)はここで分岐するが、今回はこの先を下り、御池経由で大船山頂に直登するルートを上る計画。
分岐点を直進し、竹田市(旧久住町)側の登山口「岳麓寺」方面に進む。途中では登山者と何人もすれ違った。「もう登ってきたんですか?」と声をかける人もいる。いや、実は・・・と心の中で返事。
ソババッケから続いてきた樹林帯が途切れ、少し平坦でまばらに木々の生えた場所に出た。広く陽当たりの良い場所だが、踏み跡は分かりづらく目印も少ない。やや右寄り(大船側)に歩くと小さなケルンがあり、その先に登山道が続いている。
さらに少し下ると、右手に細い踏み跡が分岐する。木にかかっている小さな札が目印で、これが「前せりコース」。
前せりコースは、大船山山頂から東に延びる尾根の直登ルート。踏み跡は細いが、とにかく上に向かって行けばいい道なので迷う心配はない。
高度を稼ぐにつれて周囲の色が鮮やかになり、なだらかなカヤトの原を抜けて再び斜面にとりつくと、辺りはすっかり紅葉のピーク、錦繍の世界となった。
相当にきつい急坂だったが、紅葉を眺め、しばしば足を止めて写真を撮りながらの上りは全く苦にならず、時の経つのも忘れて鮮やかな色彩に酔いしれた。
振り返ると、こちらも鮮やかに色づいた黒岳が眼前に迫り、その背後には由布岳、鶴見岳が並んでそびえ立つ。湯布院のあたりは、霧がまだ晴れないのか雲海が広がり、空は雲ひとつない晴天。剱岳とは趣向が異なるが、こちらも見事な「三段染め」だった。
記録的な猛暑が9月末まで続いた今年は、気温が下がりはじめると遅れを取り戻すように一気に秋が深まった感じ。大きな台風がなかったので、例年より色がきれいで、濃いのではなかろうか。

季節を間違えたミヤマキリシマが、紅葉の中でピンクの花を咲かせていた。初夏の緑の中では映える色だが、秋の景色にはひたすら浮いた存在で、寂しげだった。

急坂が終わり、灌木林を抜けると左手に御池が見えてくる。周囲のドウダンツツジは真っ赤に色付き、小さな池の水面は日差しを受けて目が眩むほどにキラキラと輝いていた。
登山道からは踏み跡を伝い池のほとりに下ることができる。水辺にたくさんの登山者が集まり、写真を撮ったり、ただ静かに風景を眺めたりしていた。
御池からは数分で山頂に到着。くじゅうと飯田高原の上には澄み切った青空が広がっていたが、南の祖母・傾の稜線や阿蘇五岳は雲が多い。裾野には霧がかかっているのか、霞んでよく見えなかった。
眼前に迫る久住・中岳・稲星などの山塊や脇に控える三俣山の山肌も赤く色づき、その下に広がる坊がつるの草原もまたラクダ色に変わっていた。
時間が許せば、何時間でも眺めていたい風景だった。

大船山からは、急坂を下って段原へ。登ってくる人とのすれ違いが多かったが、危惧していたほどの混雑はなかった。
それにしても、赤い、いや紅い、朱い。段原に下り、振り向いて仰ぎ見る大船山もまた朱い。
北大船山から大戸越に下る道は、急坂のガレ場や細くえぐれた道(靴一足分の幅しかない溝)が続き、相変わらず歩きにくい。紅葉はこの辺りもピークを迎えつつあったが、大船山頂を見たあとではやや物足りない。
大戸越から見上げる平治岳には、男池駐車場から見えた鮮やかな赤色がなかった。「あれは朝日の色だったか」と少しがっかりしながら、時間に余裕があったのでとりあえず登ってみることにした。
(左)平治岳にも季節を間違えたピンクの花が咲いていた。

大戸越からは目立たなかったが、黒岳や男池に面した西側はやはり紅葉していた。南峰から灌木をくぐり北峰(山頂)の下に来ると、露出した岩やススキの原とのコントラストが鮮やか。


秋の陽は、早くも傾きはじめた。昼間がもう2時間長ければ、もう1日休みがあれば・・・。
登れなかった山々に思いが残る。
大戸越に戻り、男池への帰路についた。下りルートは鬱蒼として歩きにくい樹林帯というイメージしかなかったが、ここの紅葉も見事で、紅葉谷とでも名付けたくなるような趣ある小径になっていた。
ソババッケに近づくと、岩がゴロゴロした斜面に変わるが、経路を示す塗料が新たに吹き付けられており、以前より歩きやすい道を選んで下りることができた。