山名/標高 九重(くじゅう)山
 三俣(みまた)山/1745m
 指山(ゆびやま)/1449m
登山日・天候 2009年10月19日(月)・曇のち晴
行程 長者原駐車場(06:30)〜すがもり越(07:50-08:15)〜西峰(08:30-08:40)〜本峰(09:10-09:40)〜北峰(10:35-10:50)〜雨ヶ池越分岐(11:15)〜雨ヶ池越(12:00)〜指山自然観察路〜指山(13:15-13:25)〜長者原駐車場(14:10)

日中はそれほど涼しくなったとも思えないが,夜間の冷え込みが例年より強いのか,紅葉の進み具合が1週間程度早まっているという。くじゅうの山々も例外ではなく,昨年より1週早く紅葉の見ごろを迎えたとの情報を得た。矢も楯もたまらず休みをもらって,平日早朝の長者原に乗り込んだ。
さすがに休日のような賑わいはないが,6時30分の時点で4〜5組が登山の準備中。山の上にはうっすらガスがかかっているが,終日「晴れ」の天気予報を信じてすがもり越に向かった。

西から強風が絶えず吹き付けてくる。硫黄山道路に出ると,見晴らしは良くなるが風を遮るものもなくなるので歩くのにも気を遣う。この風に乗って次々にガスが押し寄せ,すがもり越に到着したときには,三俣山の頂上はすっかりガスに覆われ,風も強いので上るに上れない状態。
時間はたっぷりあるので,避難小屋の中で天気の回復を待つことにした。
20分くらいすると,相変わらず風は強いものの雲は途切れがちになり,頂上が見渡せる時間が長くなった。さらなる回復を祈りつつ上ることにした。
しかし,西峰を目前にして天候は再び悪化。ガスに覆われ視界ゼロの西峰山頂には風を遮るものはなく,立っているのがやっと。時折ガスが途切れるが,見えるのは眼下に広がる雲海ばかり。山頂で休んでいたもう一組のグループは,すでに諦めモードで下山の相談をしていたが,このまま引き返すのもしゃくなので,とりあえず本峰まで進んでみることにした。
三俣山には過去3度登っているが,実は地形もルートもよく知らないのである。最初に登ったのは10年以上前,あまり時間がなく,山頂に着いた途端に長者原へ(文字どおり)駆け下りて行く慌ただしさ。10月だったが,紅葉していたかどうか記憶も定かでない。その後も,西峰に上っただけですぐ下りてしまったり,今日と同じようにガスに巻かれてわけも分からず山頂にたどりついて引き返したりと,不完全な山行ばかり。いわゆる「お鉢巡り」も「大鍋・小鍋」も,この天候ではコース確認もできず来た道を引き返すしかないのでは・・・。
行き先が見えない道を確かめながら,気持ちも足取りも重く,本峰までゆっくり移動した。


(左)空は明るく,青空も垣間見えるのだが・・・ガスが低くたれ込める北千里ヶ浜。
(中)三俣山登山道中腹から,すがもり避難小屋を見下ろす。
(右)今回はピークを踏まなかった四峰(1726m)。比較的最近になって,三俣山五番目のピークに加えられた。
案の定,本峰に着いても何も見えなかったが,腰掛けて天気の回復を待っている2〜3のグループがいた。三脚にカメラをセットしている人も。
晴れたら絶景が見えるのだろう。・・・晴れたら。
山頂から切れ落ちた斜面の縁に腰掛けると,強風を遮ることだけはできる。時間は充分残っているので,気長に晴れ間を待つことにした。

近くのグループが,ガスの中でくじゅうの紅葉の話をしている。
三俣山もいいが,大船山の紅葉もいい。扇ヶ鼻も見ごろを迎えていた,云々。
それにしても,この空模様はどうなっているのか。空は明るいので下界は確かに終日「晴れ」だろうが・・・。
過去2年が「当たり」だっただけに落胆が大きい。

10分くらいすると,ガスの切れ間から紅葉に彩られた向かい側のピーク(北峰)が姿を現した。シャッターを切る間もない,ほんの2〜3秒のできごと。それでも周囲から歓声が上がる。
一瞬の絶景は,最初は数分ごとに,そのうち数十秒ごとにやってきた。見える範囲も次第に広くなり,どうやら「大鍋」らしい窪地が眼下にあるのも分かった。北峰にとりつくルートも,だいたい察しがついた。
このまま天候が回復してくることを祈りつつ,北峰へ向かう急な下りに足を踏み入れた。


本峰と北峰の間はキレット状にえぐれており,どちらから移動する場合も,滑りやすい急斜面を大鍋の方に下ってゆくこととなる。
枝につかまりながら急斜面を下っている間にも天候の回復は進み,本峰と北峰の鞍部に着いたときには,大鍋の向こうに平治岳,大船山が望めるまでになった。
相変わらずの強風に乗ってガスが流れてきては,山の向こうに飛び去ってゆく。その一瞬,太陽を遮ったガスの切れ間から日差しがこぼれ,紅葉の上をサーチライトのように照らしながら移動してゆく。
ダイナミックに変化する風景にしばし眼を奪われ,鞍部に留まって写真を撮り続けた。
時間は,まだたっぷりある。

すっかり晴れた北峰の山頂からは,大船山,黒岳,平治岳から飯田高原を経て湧蓋山,泉水山までの大パノラマが広がる。
遠くに見える由布岳の山頂部はまだ雲の中。飯田高原の一隅には「夢大吊橋」も見えた。
大鍋の外縁を時計回りに伝ってゆくと,やがて南峰に達する。四峰を経て本峰に帰ればちょうど一周,お鉢巡りの完成だが,今回は北峰の途中から雨ヶ池越に下ることにした。
岩が多く歩きにくいヤセ尾根を慎重に下ってゆくと,やがて眼下に紅葉した小さな湿地帯「小鍋」が見えてくる。雨ヶ池越との分岐も近い。
この下山ルート,雨ヶ池越からは何度通っても分岐点が確認できなかったのだが,北峰には真新しい標識が立っており,迷わず下りて行ける。
大鍋・小鍋の紅葉に名残は尽きなかったが,雨ヶ池越に下ってゆくことにした。
このルートは,山の斜面に対してかなり「まっすぐ」につけられた道で,下りはともかく,上りで使うにはかなりキツイ道である。ただし,黒岳ほどガレ場がないので,そのぶん歩きやすい。
下る途中で2組のグループとすれ違った。「前に下りで使ったので,今度は上りで」とのこと。ご苦労様です。
平地に下りて,森の中の踏み跡をたどるうちに小さな池のほとりに出る。
この池は以前「幻の池」として案内してもらったところ。なるほど,ここだったか,ということで思い出したのは,雨ヶ池越からこの池に来るまでの道はかなり判りにくく,途中にはヤブ漕ぎのような場所もあったこと。6年経っても,状況はあまり変わらなかったような・・・
何度か道に迷いながらやっと出てきた通常ルートとの合流点には,よく目立つピンクのリボンがあった。
雨ヶ池越から長者原方面に下ると,途中の樹林帯も紅葉が進んでいた。
下山路途中の分岐から,指山の山腹を巻く自然観察路に入る。岩に「指山」のペンキ書きで,ここから登山道がはじまると思っていたが,しばらく平坦な道が続き,いっこうに登山道らしくならない。しまった,どこかで分岐を見落としたかと不安になってきた頃,ようやく登山口が現れた。
観察路から少し上向きに分岐する指山登山道も,最初は山腹を巻くほぼ平坦な道。ここは開聞岳のような螺旋状の登山道なのかと思っていたら,じきに鋭角に折れ曲がり,以後山頂までほぼジグザグの急登が続く。
なお,長者原から指山に直接登る場合は,すがもり越への上り坂の途中に自然観察路の入口がある。ここから入って10分程度で登山口である。
三俣山の手前にあって小さく見える指山だが,標高は上泉水山(1447m)とほぼ同じ。「簡単に山頂に着ける」という思いこみのせいで,急な上りが実際以上にきつく,長く感じられた。
気分的にはやっと(実際は30分程度)たどりついた指山山頂は草原で見晴らしが良く,山頂標識の立てられた大岩の上からは360度の大パノラマが広がっていた。
紅葉に彩られた雄大な眺めを楽しんだ後,名残を惜しみつつ長者原に下った。

指山山頂から牧ノ戸〜飯田高原にかけての眺め。沓掛山の全容は,初めて見たように思う。