山名/標高 英彦山(ひこさん)/1200m
登山日・天候 2010年1月24日(日)・晴
行程 別所駐車場(08:30)〜奉幣殿(08:45)〜中岳・英彦山上宮(09:55-10:20)〜南岳(10:35)〜中岳〜北岳(11:20)〜高住神社(12:15)〜豊前坊駐車場〜別所駐車場(12:55)

厳冬期の英彦山。きっと雪深く,奉幣殿のあたりも真っ白なのでは・・・と期待して来たが,別所駐車場にはひとかけらの雪もない。
気温はかなり低く道端の草には霜が降りているが,道路の凍結もない。安心しつつもちょっと拍子抜けで,山頂の雪景色も期待はずれに終わるのではと,逆にそちらが心配になった。
奉幣殿まで来ると,空気がいちだんと冷えて社殿の屋根や石段に霜がびっしり。霧氷だけは見られそうな雰囲気になってきた。
いずれにせよ鬼杉〜南岳コースは岩場の凍結が怖いので,正面コースから中岳を目指すことにした。
白い道を坦々と上るうち,路面の霜が薄雪に変わってきたようで,先行者の足跡が目につきはじめた。同行してきた犬の足跡も残る。
周囲の木々にも霧氷が目立ちはじめた。天気は快晴で,見上げる空は雲ひとつない快晴。白い枝越しに差し込んでくる朝陽がまぶしい。
とりあえず来た甲斐はあったと思いながら,さらに高度を稼ぐと・・・なんだ,なんだ,この白さは。
枝先だけではなく,木の幹まで真っ白。ひときわ高く伸びた杉が凍り付いたように直立している。遠望する山頂部も粉をまぶしたような純白。
夢中で写真を撮っていると,常連とおぼしき人が上ってきた。やはり「こんな風景は滅多に見られない」という。
前日に雨(雪?)が降り,その後晴れて気温もグッと下がったことで完全氷結。夜が明けても山の上には雲ひとつなく,なぜか車道の凍結もなし。まるで「冬の登山者サービスデー」のようなもてなしぶり。
しかし,天気が良いだけに,のんびりしていると霧氷はすぐに消えてしまいそう。山頂へ向けてペースを速めた。

中岳山頂周辺は,雪が少ないながらも「白銀の世界」。広場からは雲海の彼方に顔を出す九重連山と由布岳がくっきり。
上宮に参拝の後,南岳まで往復してみた。ピークに向かう斜面は真っ白で,遠目には単に雪が積もっているだけに見えたが,実際は半ば凍結してアイスバーンに近い状態。
雪はなさそうなのでワカンは車に置いてきたが,念のため簡易アイゼンだけは持参してきて良かった。急坂を引っ掻いて上り,無事に1200mの最高地点にたどり着いた。
豊前坊から中岳に上ってきた人が「北岳はアイゼンがないと歩けない」と話していた。来た道を引き返そうかと思ったが,その後も続々と北岳方面から登山者が上ってきていたので,用心しつつ足を踏み入れることにした。
陽ざしが強くなり,中岳山頂手前で見た純白の森もだいぶ下地が見えはじめた。地面もゆるんで一部はぬかるみ状態となり,北岳山頂までは結局アイゼンなしで歩くことができた。
北岳から豊前坊への道は次第に谷間の日陰に入り,岩場の残雪が氷の塊に変わってきた。凍ったままのロープとアイゼンを頼りに慎重に下る。
正面に犬ヶ岳,その先に豊前の町と周防灘が見渡せる。もう少し空気が澄んでいたら本州や四国まで見えそうな気がしたが,ここまで見晴らしが良かったことは,いままでなかったように思う。いい山行だった。

・・・あとは,無事に下りられれば良いのだが。

以前(2003.12),まだ雪のない初冬に通ったときも一部凍結していた斜面は,路面を流れた雪解け水が再氷結して完全にアイスバーン。階段の上に積もった雪も凍り付いており,アイゼンがなければ下りることも引き返すこともできないところだった。
いや,下るだけなら簡易アイゼンでもなんとか可能だったが,こちらを上りに使う場合は,8本爪以上でないと危険である。この時期,くじゅうもこんな感じだろうか。
筆立岩などの奇岩地帯まで下ると凍結もなくなりひと安心。アイゼンを外し,まもなく高住神社にたどり着いた。
高住神社の境内には,参拝者用にポット入りの紅茶が用意されていた。ありがたくいただき,体が少し温まった。
豊前坊駐車場まで下ると,驚いたことに道路もまだ真っ白。この辺りだけ陽が差さないらしく,数百m進むと路面の凍結は跡形もなくなった。豊前坊から登る場合は,運転にも細心の注意が必要である。