久々の来訪となる大山寺駐車場から寺の山門を経て,大神山神社へ向かう。 延々と上りが続く参道は記憶にあるよりも急勾配で,奥宮に着いたときには充分なウォーミングアップとなっていた。 奥宮社殿の向かって右手に登山道(夏山行者コース)が延びている。少し進み,左手の踏み跡から雪の残る沢筋を直登。いったん治山道路を横断し,再び直登で宝珠尾根に合流する。 |
遅い春を迎え,賑やかな野鳥の声に混じって,遠くからガラガラと岩の崩れ落ちる音が響いてくる。 雪解けとともに進行する崩落もまた春の音色だろうか。そんな風流を味わう余裕もなく,三鈷峰に到着。この時間は快晴で,遠くまでよく見えた。 |
三鈷峰山頂から望む日本海。弓ヶ浜の先に島根半島が浮かぶ。 |
まだまだ先は長い。三鈷峰の眺めを楽しんだら,すぐにユートピアを抜けて大休峠への道を下りにかかった。 振子山から親指ピーク付近までのヤセ尾根は,最初に歩いた8年前はまだ灌木の丈が短く,谷底が丸見えでずいぶん怖い思いをしたが,今ではその灌木が伸びすぎて道をふさぎ,手足どころか顔にまでかかってきて非常に歩きにくい。ここでは大規模な整備など期待できそうにないから,いずれこの縦走路もヤブに埋もれてしまうのだろうか。 |
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晴れ渡っていた空にはいつしか薄雲がかかり,遠くの山々も少し霞んできた。親指ピークを過ぎると灌木の勢いも次第に衰え,立派なブナが並ぶ野田ヶ山に入る。 標識を見落としたまま下りにかかり,残雪とぬかるみ(というより泥沼)でよく分からなくなった踏み跡を辿りながら大休峠へ無事到着。楽に歩けるはずだった下りでの思わぬ悪戦苦闘で疲労が倍加し,ここで予定していなかった大休止を取った。 |
しかし,大休止を取っても疲れが抜けきらない体では山歩きを楽しむ余裕もなく,痙攣が起きそうな脚を何とか動かして山頂まで体を運ぶのがやっと。 とはいえ山頂で休んでいるとますます体が固まりそうなので,写真を撮るとすぐに次のピークへ向かうことにした。 実は親指ピークよりも怖い「小矢筈」。そして今回の縦走で最大の難所「甲ヶ山」。この2つを越えないと下山できない。脚は持ちこたえてくれるか・・・ |
あとで写真を見て,実にすばらしい眺めだったと分かった矢筈ヶ山山頂。現地では考える気力も湧かなかった。 |
小矢筈を越え,ブナ林を抜けて甲ヶ山の真下まで来ると,登山道は岩場に沿って右へトラバース。いま冷静に考えれば,上部から落石でもあればイチコロな場所だったような気もするが,このとき,そんなことまで気が回らない。 上りポイントにたどり着くと,ペンキの印に従って今度はひたすら上を目指す。前回の下りでは死ぬほどの恐怖を味わった場所だが,上りは意外にあっけなく,短時間で山頂に到着した。 |
ここは,船上山からの上り方向は意外と楽に歩けたのだが,下りでは一か所だけ「とてつもなく怖い岩場の下り」があり,足がすくんだ。 その後は勝田ヶ山,船上山を経て少年自然の家まで,ごく普通に歩ける登山道が続く。一部を除きずっと下り。最初は急坂だが次第に緩やかになり,新緑に彩られたブナやナラの見事な森が船上山まで続く。この道は秋も良さそうだし,できれば厳冬期にも訪れてみたい。距離が長いのが難点だが。 |
長い下りに飽きてきた頃,やっと木々の向こうに船上山神社の社殿が見えてきた。 日差しを受けて屋根がきらきら輝いている。ここまで来ればあとわずか。なのだが,普段は何でもない船上山の下山路が,疲れ切った足には非常に長く,ほんの少しの斜面で滑りそうになった。痙攣は治まったが,やはり脚は相当にダメージを受けているようだった。 何はともあれ,無事下山できて良かった。 |